暁 〜小説投稿サイト〜
とらっぷ&だんじょん!
第一部 vs.まもの!
第16話 いこうぜ。
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なだれていたノエルは、ウェルドが部屋に入ると顔を上げた。赤い額当てを巻き、大剣を負い、戦いに向かう格好でいるのを見て少し驚いた様子だった。
「俺たちも行こうぜ」
 表情に迷いを滲ませ、またうなだれて、どう反応すればいいのか考え始めてしまった。
「立ち止まってたって、どうにもならねぇだろ? あの件はもう終わったんだ」
「……立ち直りが早いのね」
「俺だってスッキリすべて納得したわけじゃねえよ。でもさ、じっとしてたら立ち直れるわけでもないだろ? ショックを受けるのは当たり前だし、ここがカルスの棺桶じゃなかったらむしろ気が済むまで休むべきだけどよ」
 ノエルが何も反応しないので、ウェルドは一度言葉を切った。
「……まあ、人それぞれだから無責任なこたぁ言えねぇけどよ、たまには何もかも忘れてスカッと暴れるのもいいと思うぜ」
「あたしはスカッと暴れたいとは思わないけど、そうね……あなたの言うことにも一理あるわ……」
「俺、九時半くらいから遺跡に潜ろうと思うんだ。一旦クムラン先生の家に顔出して、時間までそこにいるからさ。よかったら後から来いよ」
「ウェルド」
「何だ?」
「あなたの話」
 ノエルはウェルドの顔を直視せず話す。
「こんな惨い事が罷り通るなら、神様なんていないって……あたし正直、幼稚だと思ったわ。子供の発想だって……」
「んーーー……」
「だけど、今なら少し、わかる……」
 ウェルドは苦笑した。
「ありがとな。そう言ってもらえたの、初めてだぜ」
「そう?」
「俺さ、金ためてバイレステの学校に入ったはいいけどさ、結局追い出されたんだ。それが原因で」
「神なんかいないって、人前で大真面目に主張したわけ?」
「おお、そうよ。論文書いて発表したさ。馬鹿みたいだと思うか?」
「思うに決まってるでしょ。そんな事してあなた、殺されてもおかしくなかったのよ」
「俺もそう思う」
 ウェルドは片手をあげ、出ていこうとした。
「じゃあな。時間まで待ってるぜ」
「ねえ」
「どうした?」
 ノエルは青白い顔で、紫色の唇を噛む。
「どうしたんだよ。言ってみな」
「ねえ、あたし達……あなたもあたしも、この町の人みんな……」
「……」
「これから何が起きて……これからどうなるのかしら……」
 難しい質問すぎて、ウェルドには答えられない。
「……ごめんなさい。何でもないわ。準備して、後から行く……」
「……ああ」
 ウェルドは宿舎を出た。



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