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ボロボロの使い魔
『絆を繋ぎ止めるもの』
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っている




タチバナ
タチバナサクヤ

それが彼の名前
私が初めて成功させた魔法の成果
使い魔は下僕
だから、主の為に戦うのが当たり前

……違う 使い魔はパートナー
お互いを認め支え会う


改めて見る男は…やはり無様だった
いいように痛めつけられ 立ち上がっては殴られ転がり続けていた
周囲を囲む観客から罵倒され嘲笑されながら
それでも、魔法など使えなくとも立ち向かい 背を向ける事なく戦い続けていた

その姿がルイズの心のどこかを僅かに変える

「馬鹿…」

他にあの男を表現する言葉があるだろうか

今、初めて彼女は振り返り考える 自分は彼の名前を知らなかった
…違う
自分が聞かなかった
聞こうともしなかった、只自分に必要な事だけを尋ね、彼の話など聞こうともしなかった
だが彼は戦っている
勝手に召喚されたのに 使命でも無く、義務で無く
ただ、私の為に

…ならば私は彼の為に何かをしなくてはならない

ボロボロになりながら自分の為に 戦っている彼の為に
主としての義務だから、使命だから?
たぶん違う…と思う
今、内から溢れ出そうになっているあの男に対するこの感情に答えを出すことは出来ない
只、その衝動に突き動かされるまま足を進める。

そして懐から取り出した『箱』と『絵』に視線を落とす 自分にはこれが何か解らない
役にたつかどうかも分からない
自分達はあまりにお互いの事を知らなさすぎた

それでも
思いっきり投げる
彼が持っていたものを、彼の下へ

ルイズが投げた『箱』は男の傍に転がり辿り着く
そして『箱』を目にし驚愕している男の名を叫び振り向かせ、更に『絵』を投げ渡す

今、自分の体を動かしたものは何なのか
主としての義務感か、使命感だったのか
その思いに答えを出せないまま
それでも少女はこの時、初めてその一歩を踏み出した






もはやどうにもならない状況だった
ワルキューレの囲みからなんとか転がるようにして抜け出した
少し前からコントロールがかなり甘くなっている、だからと言って絶望的な状況は何も変わらない

先程モンモラシーの声が僅かに聞こえた
そちらを振り向く余裕も無いが、明らかにワルキューレの動きが乱れを生じ ている
それは彼女の存在にギーシュが動揺しているからなのだろう
まだ、彼は引き返す事が出来るのだ
だからこそ彼に勝たなくてはならない
勝って、ギーシュの目を覚まさせる為に
『魔法が力の全てではない』
彼自身が言った筈の言葉を、優しかったという心を取り戻させる為に

なのに
ロクに動かない体ではできる事など知れている
ただただ耐え続ける、それが今の自分に出来る唯
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