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ボロボロの使い魔
『絆を繋ぎ止めるもの』
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「なら、貴方は貴族じゃ無いわよね!魔法が使えない『ゼロ』なんだか ら!」

言い返せない、拳を握る
同じ事をギーシュに言われその時は耐えた
だが、あれから更に苛々を溜め込み 今いいように誘導され嵌められた
その屈辱が遂にルイズの沸点を超えてしまった

「…っ煩い!黙りなさいよ!」

勢いのまま強く突き飛ばす、もとより華奢な彼女が踏ん張れる筈もなく小さな悲鳴とともにモン モランシーは転び綺麗な髪が土にまみれた
だが、無様に転がったモンモランシーを見下ろして 頭に上っていた血が一瞬にして凍りつく
呻き、ゆっくりと上半身を起こした彼女の左腕はおびただしい程の血を流し、真紅に染まっていたのだ



「ひぐっ…!」

尖った石かそれとも小枝か、自分の腕を突き刺さし服を破り肉を抉った物を 確かめる気にはなれない
そんな余裕は無い、ただひたすらに痛い
荒事の経験など皆無と言っていい、そんな自分の細腕から溢れだす物を目にするだけでゾッとする
その恐怖心が実際に感じる痛みを更に増幅している

だけど、ここで痛みに泣き喚く訳にはいかない
泣くのも治療も後悔も、全部全部後でいい

自分しなくてはならない事、伝えなくてはならない事はそんな事じゃない

自分が流している血が彼女に冷静さを取り戻したと言うのならそれでもいい、橘が受けている苦痛は決してこんなものでは無いはずなのだから

…本当は解っている、彼女を責める資格など自分には無い

『彼』を信じ旅立ったキュルケの強さに憧れ
そして今、力などなくとも立ち向かう橘の強さを目の当たりにしたからこそ思える

自分は何も出来ないと、悲劇のヒロインを気取る前に為すべき事は幾らでもあったのだ
本当にギーシュの事が好きだというのなら、真正面からぶつかって話を聞くべきだった
話す事自体は何度も試みて、しかしいつも逃げていた
邪険に扱われる事が、昔と違う彼を見ることが辛く、最後まで向き合って話しを聞く事が出来なかった

中途半端な距離感に甘えていた その結果、絆が完全に途切れたとしてもその決着は自分でつけなくてはならなかったのだ

逃げ続けて、その結末が、人壁一つの先にある
だからせめて、今、自分が伝えられる事を伝えたい

ぽつりぽつりとモンモラシーは言葉を続ける

「ほら…貴方は私より強いじゃない…魔法が使えるかどうかなんて関係無い… ヴァリエール、貴方 は私に勝ったじゃない!」

血が滲む腕を抑えながら、突き飛ばされた痛みを我慢しながら
それでもモンモラシーは顔を上げ、感情の見えない呆然とした顔で自分を見 下ろしているルイズに語りかける

「タチバナはね、貴方がメイドの子を庇ったから…だから悪い奴じゃないん だって…!」

ルイズ
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