第十四話〜英傑集結・前〜
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た少女の名は趙雲。これもまた劉備軍の主力の一人だ。趙雲はうっすらと笑い、そして関羽の耳元で囁く。
「それは構わぬが、他の将兵が注目しているぞ?」
「っ!?」
趙雲の言葉を聞くや否や、関羽の顔は真っ赤に染まる。気づけば、将兵は皆二人を、いや、正確には関羽を注視している。
「いつもどおりだねぇ」
「健気なこったなぁ」
「俺も将軍に詰め寄られてぇなぁ」
兵たちは実に好き勝手言っている。羞恥の感情で関羽の脳内は埋め尽くされる。
「愛紗ちゃんは人気者だね!」
先ほどまで叱責していた義姉の一言が止めとなった。
いや、この場合地雷を踏み抜いたというべきだろうか。ゆらりとどす黒い気をまき散らした関羽は得物を手に取る。
「………どうやらお前たちは元気が有り余っていると見える。ありがたく思え。この関雲長直々に稽古をつけてくれる」
あんまりな物言いである。
明らかに八つ当たりだ。突然の死刑宣告を受けた兵たちは顔を真っ青にする。
「ちょ、関羽将軍!ここは船の上ですよ!?」
「気にするな、船体には傷をつけない」
「そういう意味じゃなくて………アッー!!!」
一人の兵の断末魔を皮きりに、次々に兵士は黄河という大河へと自由落下を開始していく。
あぁ、これから戦いなのに軍勢が減っちゃうな………
この騒ぎの大元となったお気楽な少女は、甚だ見当違いなことを思い浮かべていた。
「ねぇ、冥琳まだぁ?」
「………何度質問したら気が済む…」
『世直し』の檄文を受け集結のための行軍を続ける各軍が、申し合わせたかのように気の抜けた会話を繰り広げている中、袁術軍の配下という形での参加を余儀なくされた孫家は、例によって柱石二人の漫才が続いている。
「だってもう半月よ?戦いが控えているのにこれだけお預けを食らうなんて…」
「お預けも何もまだ戦場に着いてすらいないんだが?」
「うっ…」
『漢』の一大事。
建前上、救国の招集。
そんな大事を前に二人は至って普段通りだった。理由は言わずもがな、最早忠誠も何もないからだ。
袁術の監視下に置かれ、戦力を削られた彼女たちにとってこれは実がない戦い。名を挙げるにしても、それは全て袁術のものとなる。
そんな状況の中、行軍中から意気込むことがどれだけ無意味なことか、彼女たちは知っているのだ。
「だって相手は董卓軍よ?それに連合側にも面白い子がいるのよ?」
「落ち着け、莫迦者」
だからこそ彼女たちの力関係も変わらない。
どれだけ熱を入れて、控えている大事への魅力を語ったところで、それはあくまでも雪蓮の個人的な欲求である
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