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呉志英雄伝
第十四話〜英傑集結・前〜
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英傑に求められるのは強い求心力である。
例えいかなる知謀を持ち合わせていようとも、圧倒的な武力を持っていようとも、崇高な理想を持っていようとも、この絶対の条件を持たぬ者は乱世に立つことすらかなわない。
では、反董卓連合が結成された今において、この大陸にはどれほどの英傑がいるだろうか。
そう考えた時、識者たちが真っ先に名を挙げるのが陳留太守である曹孟徳だろう。その気性は剛毅の一言で、また気性に違わぬ才能を持ち合わせた稀代の大器。
そんな彼女が、この連合結成が持つ意味を知らずにいるなど到底あり得ないことであった。

過日、曹操の元へ旧友・袁紹からの檄文が贈られた。
連合への参加を催促するその檄文に対し、曹操は諾とのみ返信した。
そして今は連合結成に際して、各勢力との合流のために一路官渡へと向かっている。そこは曹操が治める陳留の目と鼻の先にあった。



「それにしてもとんだ茶番だねぇ」


そう呟くのは白髪の青年・劉雲である。
これから戦へと赴く将兵の表情には緊張が見て取れる中、彼はあくまでも平常通りであった。
そんな緊張感のない青年を窘める声が挙がる。


「これから戦いだというのに何という体たらくだ!!!」


声の主は、後に魏武の大剣とまで呼ばれることになる夏侯惇だ。ふと、彼女は思いついたように劉雲へと問い掛ける。


「お前、また口調が変わってるな」


思えば、袁紹の使者が来た時の彼の口調は厳格であり、高慢であった。それが今ではお気楽なものへと変貌している。
その問いに彼はむすっとした表情で応じる。


「あの口調じゃあ肩、凝るんでねぇ」

「………あなた…」


あんまりな理由に思わずため息をついたのは、先にも紹介した英傑・曹操。鬼才の持ち主たる彼女をして、未だに劉雲という人物は測りかねていた。
と、そんな心憂げな主君のために、青年へと食ってかかる娘がいた。


「アンタのせいで華琳様が疲れてしまってるじゃない!あぁ、華琳様、許可さえ戴けたらすぐにでも、こんな下賤な男なんて破滅に追い込めますのに………」

「……随分な物言いだねぇ、文若。お前さん、お仕置きが必要かね?」


劉雲の瞳が猛禽類のそれとなる。


「おおおおおおお脅しになんて屈しないわっ!!!」

「ん、そうかい。なら今から話すことは独り言だと思って聞いてくれ」


彼の者の顔には、既に底意地の悪い笑みがこぼれている。


「人ってのは元来恐怖に並々ならぬ好奇心を持ってるってもんだ。まぁ恐いもの見たさってやつかね。そこで考えたんだ。それを売りに出来る商売はないかとねぇ。そしたらいいのが見つかったのよ」


ごくり
荀ケの喉が鳴る。間違っても期待してではない。明らかに
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