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呉志英雄伝
第十三話〜乱世の幕開け〜
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、更に水でふやかしてまでしてようやく理解させたのだった。
白髪の劉雲は、その髪の色も相まってどこまで疲れているように見えた。


「劉雲、あなたはどう思う?この檄文、そして此度の政変を」

「………とんだ茶番だな」

「…それだけなの?」

「………中身がない、ということはお主がよくわかっているだろう、文若」


曹操の問いを劉雲はばっさりと切って捨てる。
そのあまりに当たり前のように語る口ぶりに荀ケはため息混じりに毒づく。尤もそれも一刀の下、ばっさりと切り捨てられるのだが。


「…ともあれ、余は部屋に戻るぞ。ただでさえ貴重な時間を浪費された」


そう言って、劉雲は身を翻して部屋を後にした。
姿が見えなくなったことを確認すると、荀ケは刺々しい言動に不満を顕わにする。


「何よ、あの態度!客将のくせに横柄過ぎるのよ!それに不機嫌だからといって当たらないでほしいわ!」


顔を真っ赤にし、怒り狂う荀ケは毛と尾を逆立てる猫の姿を幻視することが出来る。
そんな彼女の言葉に夏侯惇は首を傾げる。


「…そうか?今のあやつはかなり上機嫌だぞ?」

「………は?」

「さしずめ獲物を狙い定めた狼ね。まぁあなたはまだ付き合いが浅いから、分からなくとも無理はないわ、桂花」


その眼で何を捉えたのかしら。
その鼻で何を嗅ぎつけたのかしら。
それとも最初から全て(・・)を読めているのかしら。

まだ怒りの抑えきれない荀ケと、その怒りが理解できていない夏侯惇のやり取りを眺めながら、曹操は誰にも届かない呟きを漏らしていた。





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