第十三話〜乱世の幕開け〜
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この時の中原および陳留を語る上で欠かすことのできない要素。それは大規模な政変であった。それこそが董卓という勢力の台頭の一因となったからだ。
劉協は義母である何氏との仲がすこぶる悪かった。正確に言えば何氏にとって劉協は、己が実子・劉弁と皇帝の座を争う邪魔者でしかなかったため、何かと目の敵としたのだ。
そんな折、何氏の兄であり、漢の大将軍である何進が十常侍により謀殺される。権力の後ろ盾を失った何氏及び少帝・劉弁は十常侍の傀儡とならざるを得なかったのだ。今から五年前のこととなる。
しかしそんな中央の腐敗、宦官の不逞を周囲が見逃すはずもなく、天下の名家・袁家の長の袁紹、そして西涼の雄である董卓が十常侍の一部を誅殺するに至る。
とは言え、そのときには既に何氏は亡きものとなり、少帝も衰弱し切った状態を晒していた。
その後、少帝は間もなく息を引き取り、漢室の正統後継者は劉協のみとなり、彼女が現在の皇帝となったのだ。これが今から一年前の話。
その陳留は曹操によって治められている。曹操の類まれなる才覚と彼女の元に集う英傑・賢人の尽力により、現在の陳留はこの大陸の中でも有数の大都市へと成長していた。
そんな陳留にも連合の使いは遣って来た。
「以上が我が主・袁紹からの言伝でございます」
「…そう、ご苦労様。秋蘭、この使者の方を丁重に御持て成しして」
「御意に。では使者殿、部屋へご案内いたします」
秋蘭と呼ばれた薄い青色の髪を持つ女性―夏侯淵―は主の言葉に従い、使者を伴ってその場を辞す。
使者が去り、曹操と重臣のみが残った玉座の間には重苦しい雰囲気が流れていた。
「華琳様…お分かりかと思いますが、袁紹は」
「皆まで言わないで桂花。アレの、麗羽の性質は十分に理解しているのだから」
「………は」
その沈黙を破り、主に語りかけたのは荀ケ。その特徴的な―猫の耳を模した様な―頭巾も心なしか草臥れている様に見える。
しかしそんな彼女の言を曹操は遮った。曹操にとって連合に参加するのは、時勢を見るに決定事項であったので、然して問題ではなかった。
だが召集のための檄文、そこに書かれた大義名分はあまりに稚拙なものであったため、今こうして彼女は鈍い痛みが響くこめかみを押さえているのだ。
「つまり袁紹は『自分が気に入らないから董卓を倒しましょう』と言っているのか」
「………ようやく理解したか、莫迦者が」
主の苦悩など何処吹く風、ヒソヒソと話を重ねているのは猛将・夏侯惇と劉雲。
姓から判断できるとおり、惇と淵は姉妹である。そして劉雲は曹操が旗を揚げ幾ばくかしてから力を貸している、曹操軍の客将である。
劉雲はイマイチ頭の回転の鈍い夏侯惇に、使者の言っていたことの裏側を噛み砕いて
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