暁 〜小説投稿サイト〜
呉志英雄伝
第十三話〜乱世の幕開け〜
[2/4]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
の話を打ち切りにかかる。


「………はぁ」


剣呑な雰囲気に雪蓮は再びため息をつく。
思えばここ5年、見知った顔を一度に見るという機会がなくなった。袁術の下につき、それに伴って戦力を分散することになったのが一番の要因だ。
かつて一枚岩であった孫呉は今や散り散りになっている。


「あの娘たちは元気してるかしら」


虚空を眺め、ぼそりと呟く。
彼女はまだ信じていた。
今でも孫呉は一つだと。
また『全員』で笑いあえる日が来ることを。
監視下に置かれ、軍事権すらままならない力無き君主の身には、信じることしか出来なかった。











「ほぅ、中央で不逞の輩が専横の限りを尽くしていると」

「うむ、どうやら名を董卓というらしい」


いつもの光景が広がる玉座の間。
その中で袁遺はいつものように頬を緩ませ、玉座に座る『形だけの主君』から話を聞いていた。中央における政変と、それを鎮めるための連合を組むということだった。
正直に言えば彼にとって今は大事な時期であるがために、話を聞いた瞬間では心のうちで舌打ちをしていた。
しかしよくよく考えてみれば、何も自分が行く必要はないのだ。君主さえ出向いていればこちらの誠意は伝わる。
その間に揚州内に手を回し、掌握することも可能である。
ふと彼は目の前の少女に目を向ける。
何の苦労も知らず、生まれがよいから君主の席に座る能無し。
そのような者に使われるのは真っ平御免だ。だからこそ今までこちらが主導権を握れるように立ち回っていた。
無論君主という肩書がある以上、公の場では袁術を立てるように振る舞った。
そのことも尋常ならざる自尊心を持ち合わせる袁遺を刺激していた。しかしそれも中央の瓦解と共に終わりを告げる。あともう少しなのだ。
ならば


「袁術様はもちろん参加なされるでしょう。私は主が不在の間、揚州の地を護らせていただきます」

「主こそ真の忠臣じゃ!誉めてつかわそう!」


精々悪役を演じてもらおうか。
このような小娘にはちょうどよい末路だ。
袁遺と同様、配下の前では『君主』という役柄を演じさせられている袁術に半ば呆れながら、彼は礼をとり、踵を返す。
内心では今回の連合に参加するまでの過程をどう脚色して世間に流すか、ということを考えていた。







ー――――――――――――――――――――――――――――――――






場所は中原。
古のときより、中華の歴史はこの地域を中心に刻まれていた。洛陽は謂わずと知れた王都。長安も全土掌握を果たした秦の都であった。
そんな中原の中心よりやや東にずれた地を陳留という。漢の今上帝・劉協も即位する以前は陳留王に封じられていた。
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ