As Final 「雪空の下で」
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な! 動かないでくれ。儀式が止まる」
こちらに駆けようとしたヴィータをリインフォースが制した。動いてしまうと儀式が止まってしまうのだろう。
俺は車椅子を押し続け、リインフォースの前で止めた。それと同時にはやては再び口を開く。
「あかん! やめてリインフォース、やめて!」
「…………」
「破壊なんてせんでええ。わたしがちゃんと抑える! 大丈夫や。やからこんなんせんでええ!」
「……主はやて、よいのですよ」
「良いことない! 良いことなんて……何もあらへん」
はやての目に涙が浮かんだ。それを見てもリインフォースは穏やかな笑みを浮かべたまま、彼女を見ている。
一瞬リインフォースと視線が重なった。はやてを連れてきたことで何か言われるかと思ったが、俺に対しても穏やかな顔を向けるだけだった。彼女は視線をはやてに戻すと話し始める。
「ずいぶんと長い時を生きてきましたが、最後の最後であなたに綺麗な名前と心を頂きました。ほんのわずかな時間でしたが、あなたと共に空を駆け、あなたの力になることができました」
「ぅ…………」
「騎士達もあなたの傍に残すことができました。心残りはありません」
「心残りとかそんなん……」
「ですから、私は笑って逝けます」
リインフォースの表情は穏やかなものだが、そこには強い決意を感じる。彼女ははやてに何を言われようとも、儀式をやめるつもりはないようだ。
「あかん! わたしがきっと何とかする。暴走なんかさせへんて約束したやんか!」
「その約束はもう立派に守っていただきました」
「リインフォース!」
「主の危険を払い、主の身を守るのが魔導の器の務め。あなたを守るための、最も優れたやり方を私に選ばせてください」
「……そやけど」
弱々しい声と共にはやての目から涙が溢れた。
その姿を見た俺の胸の内に、自分がやったことは正しかったのかという疑問が湧き上がってくる。自分が正しいと思ったことが、他人にも正しいことだとは限らない。俺が行ったことは、はやてを苦しめているだけなのではないか。
「ずっと悲しい思いしてきて……やっと! ……やっと救われたんやないか」
「私の魂は、あなたの魔導と騎士達の意思の中に残ります。私はいつもあなたの傍にいます」
「そんなんちゃう、そんなんちゃうやろ!」
「駄々っ子はご友人に嫌われます。あなたの大切な彼も困っていますよ」
ゆっくりとはやてが俺の方を振り返る。
涙を流している彼女の顔に思わず顔を背けたくなったが、ぐっと堪えて視線を重ねた。俺は自分で思っている以上にひどい顔をしているのか、はやては何も言わない。溢れる涙で何も言えないのかもしれないが。
「ですから聞きわけを我が主」
「……リインフォース!」
一度俯いた後
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