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打球は快音響かせて
高校2年
第二十六話 ゼッケン
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からの秋を戦って欲しい。選ばれなかった者はサポートに回りながら、臥薪嘗胆、例えば来春の選抜で良いところだけを持っていってやると、そういう気持ちで精進して欲しい。以上だ!」
「「「はい!!」」」

浅海の話が終わってミーティングの輪が解けると、背番号を貰った者は意識したような慎ましい態度で全体練習後の自主練に取りかかった。
「背番号貰えた者は、貰えなかった側の気持ちを考えて行動する事。」
これは、主将の渡辺が選手間で通知徹底させていた。渡辺に提案したのは、もちろん副将の太田である。

「好村、おめでとう」
「……あ…」

そんな何とも言えない雰囲気の中で翼に声をかけてきたのは、意外にもベンチを外れた同級生だった。この連中とは、夏までのBチームでずっと一緒の仲間だった。夏までBチームに送り込まれた数人の中で、唯一翼だけが秋のベンチ入りを勝ち取ったのだった。

「お前、B戦でもめっさ好投しよったけんな」
「俺らん中から使いもんなったんはお前だけや」
「春こそは俺らもベンチ入るけど」
「まずは秋、俺らを選抜連れてってくれ」

翼は目の奥がジーンと熱くなってきた。
自分が貰ったゼッケンの重み。それがこの瞬間になって急激に理解されてきた。たかが野球の、たかが背番号。しかしそこには、同じように野球をしてきたにも関わらず、力量の多少の差でキッパリと活躍の可能性を奪われてしまった者たちの思いが詰まっている。綺麗な思いだけでなく、嫉妬や恨み、そういったものも含まれてはいるが、だからこそ、その番号は重い。

「うん。頑張るよ。」

目を少し赤くしながら翼は誓う。
そんな翼を、ベンチ外の仲間達は穏やかな顔で笑った。


三龍野球部劇場開幕。
水面の秋の陣の火蓋が切って落とされる。



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