番外10話『トトもの』
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何も知らない民衆がみれば完全に王が黒という状況。
ビビやイガラムがそれを信じないのはわかる。誰よりも王に近い人間だったのだから。
だが、今ハントの目の前にいるトトは違う。
首都を離れていたトトは、ビビやイガラムとは違い、民衆側に属する人間だ。
それのに――
「――どうして……国王さんを信じられるんだ?」
国王コブラという人間を知っているから? 親しかったから?
それだけで、完全に黒という状況にあっても国王のことを信じられるものなのか?
それがハントにはわからなかった。
だからハントはトトの目を見つめて、問いかけた。
その問いに、トトは遠い目をして、ため息を一つ。
「……」
少しだけ黙り込んだかと思えば「うーむ」と唸り、立ち上がった。
「……」
「……」
一つの言葉が紡がれることもなく、ただただルフィの規則正しい寝息が二人の間に降り注ぐ。
じんわりと広がる静寂な空間に、トトがゆっくりと口を開いた。
「国王様はね……本当にそんな人じゃないんだ」
「いや、でも――」
それじゃ納得できない。
そう言おうとしたハントに、トトはゆっくりと言葉をつづける。
「反乱軍はね……みんな若者なんだ」
「……?」
「私らのような、いわゆる老人はね……そのほとんどが国王様に対して疑いすらもっちゃいない……理由なんてないんだ。国王様はこの国が好きで、民衆を大事にして、そういう人で、国王様がそんなことをするわけがないから。するわけがないとわかっているから――」
「……」
「――それだけなんだよ」
子供に言い聞かせるようにこぼされた言葉は、ハントにとっては想定外で、衝撃的なソレ。
国王コブラという人間を知っているから。それだけで、完全に黒という状況にあっても国王のことを信じられるものらしい。ずっと国王の政治下にいた人間ならば誰でも国王を信じられると言っているトトの発言に、このアラバスタの国というあり方のすべてが詰まっていた。
――すごい。
言葉を失い、ハントに浮かんだ言葉はただただ稚拙な一言。
だが、それ以上になんと思えばいいかもわからないような感覚がハントの中に浮かんでいた。
ハント自身この感情はトトに向けられているものなのか、国王に向けられているものなのか、それともこの国のありかたに向けられているものなのか、わからない。
ただ彼は思ったのだ。
すごい、と。
「……そ、か」
何かを言わなければならないと思うも、やはりまともな言葉は出ない。どうにか頷くだけの言葉を返したハントへと、トトがふと顔を向けた。
「さっきはとんだ醜態を君たちに見せてしまったね」
頬を人差し指で軽くかきながら苦い笑みを浮かべるトトが
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