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書く執念
第五章
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第五章

「凄いことやで。そやからな」
「このこと。忘れたらあかんな」
「織田作さんのことな」
「絶対に」
「そや。わしは忘れへんわ」
 編集者は言った。
「絶対にな。あの人のことな」
「そやな。そやったら」
「わし等もあの人のことは忘れへんで」
「絶対に」
 こう言ってだ。周りも織田のことを忘れないと誓うのだった。
 編集者は織田がよく通っていた店を巡りもした。その中でだ。
 あの洋食屋にも入った。するとそこにだ。
 織田の写真が飾られていた。丁度書いているところだ。コーヒーが横にある。
 その織田の写真を見てだ。編集者はおばちゃん達に尋ねた。
「この写真は」
「はい、織田作さんです」
「あの人でっせ」
「そやな。織田作さんやな」
 編集者は目を細めさせてだ。そしておばちゃん達に言った。
「死んでも。ここにおんねんな」
「このお店よお来てくれて書いてましたから」
「美味しい美味しいって食べてくれましたし」
「うちのお店のことも書いてくれました」
 作品の中でだ。店を出してもいたのだ。
「ですからこうしてですわ」
「織田作さんの写真飾っときますね」
「ずっと忘れんように」
 こう言ってだ。おばちゃん達は笑顔でその織田の写真を見る。そしてその横にはこうした言葉が書かれていた。
『虎は死んで皮を残す 織田作死んでカレーを残す』
「カレーかいな。そやな」
 編集者はその言葉を読んでこう思った。それが何となく織田らしいと思ったからだ。カレーはそのままカレーだがその他にも意味がある、それが織田が為してきたことだと思ったからだ。
 そのうえで彼が愛したその最初から御飯とルーが混ぜられており卵も置かれたカレーをソースをかけてから掻き混ぜて食べた。それは確かに織田の味だった。
 その味を楽しんでから店を出て煙草を買う。そしてその煙草を吸ってから。ふと後ろの煙草屋からこんな声が聞こえてきた。
「前織田作さんやと思うたらちゃう人で」
「何か今でも生きてる気がするなあ」
「そやな。今でもヒロポン打って書いてる」
「そんな気がするわ」
 こうだ。店の娘さんと客が話していたのだ。そうした話を聞きながらだ。
 編集者は煙草を吸いながらだ。こう思ったのだった。
「死んでカレーを残してまだ生きてる気がする」
 織田のことだ。明らかに。生きてる気がするということは心に残っている、そしてそれはまた死んだということでもあり同時に織田のしてきたことが彼等の中に残っていることでもある。そのこともわかっていた。
 それでだ、彼はこう思ったのである。
「あの人らしいわ。天国でも書くんかな」
 そうならいいと思った。それが織田らしいからだ。そして自分がまた織田と会った時はだ。カレーを一緒に食べながら原稿を受け取り
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