高校2年
第二十五話
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たのである。144キロの球速に取り憑かれた乙黒がもしそのまま監督を続けていたら、無かったかもしれない事だ。
美濃部が小さな体を大きく見せるように背筋を伸ばして振りかぶる。そしてリズム感たっぷりに足を上げて踏み込み、腕を鋭く振る。
ゴキッ!
右打者に対して逃げていくスライダーを見せた後は、一転して懐をシュートで抉った。
ボテボテのゴロがセカンド渡辺の正面に転がり、無難に一塁へと送られる。
「ナイセカン!ツーアウトー!」
野手に声をかける宮園の表情は明るい。
前チームの頃より、声も大きくなったように感じられる。一言で言うと、生き生きしている。
(よっしゃ。高校初完封まであと1人や)
快調な投球を続ける美濃部は、確かな手応えを感じていた。元々、鷹合になんて負けているつもりは無かったが、やはり指導陣に認められ、こうして試合に使ってもらえないとモチベーションは上がらない。これまでの鬱憤を晴らすかのように美濃部は投げる。
(あっ!!やべっ!)
カーン!
少し気が抜けたか、欲が出たのか、甘めに入った球を打者はとらえる。ハーフライナーが外野まで飛んでいく。
「オーライ!」
左中間に飛んだ打球を、この回からレフトに入っていた翼が追いかける。ブランクから体を慣らす意味合いで外野ノックを受けていた翼の姿がたまたま浅海の目に留まり、初めて外野で起用されていたのだった。
パシッ!
右手のグラブを目一杯打球に伸ばすと、その先っぽに打球は収まった。
「おおー!」
「ナイスキャッチー!」
痛烈な打球をランニングキャッチした翼にチームメイトから歓声が上がる。翼は照れ臭そうに笑顔を見せる。
「ハハハ!ヨッシーまだまだやな!俺なら正面で捕れとるで!」
バックアップに回っていたセンターの鷹合が高笑いしながら、翼の頭をバシバシと叩く。
翼も鷹合にやり返して、左中間の2人ではしゃぎながら試合後の挨拶に向かった。
(……明らかに雰囲気変わったっちゃね)
ベンチでスコアをつけながら、京子は隣に立っている浅海を見上げる。
(この人が監督になってから。)
京子から見える浅海の横顔もまた、充実した表情を浮かべていた。
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