58話「幼き日の色」
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大会一色だ。今日の試合の誰それがどうだっただの、賭けの結果はどう出るに違い無いだの。
常人より耳の良いアシュレイもはじめはこの喧騒に耳が潰れるかと思ったが、慣れてしまえばまあ我慢できないことも無い。
「あしたとあさってはチーム戦をかんせんして〜、そうしたらもう次かぁー! 早いわねぇ〜……うふふふふ!」
「あら、リアさん、なんだか嬉しそうですねえ。どうかしましたか〜?」
「だぁって、3日後にはもう準けっしょうでしょう? そうしたら次の日にはもうけっしょうなんだからぁ! うふふふふ、そうしたら1000万リールと……」
「299万……うふふふふ〜!」
「「うふふふふふふふ…」」
捕らぬ狸のなんとやら、と最早呆れを交えつつアシュレイが2人の不気味な笑いを聞き流していると、不意に耳に心地よいテノールが響いた。
「楽しそうなお話をしているね、お嬢さん方。僕も混ぜてくれませんか?」
「だぁれ? あなた」
とろんと濡れた眼で銀の少女が問いかけるのは、どこかで見たような金髪の美青年。珍しくもその特徴的な長いエルフの耳を隠そうとせず、碧色の瞳は甘く弧を描いている。自分の美貌を知り尽くした上で浮かべたその微笑はあらゆる女性を虜にしてしまうだろう。
「申し遅れてすまない。僕はフラウ・クレイオ・エウテルペ。貴女の楽しそうな笑い声につられて声をかけてしまったのです。お名前をいただけませんか、美しい人」
流石エルフとしか言いようのない美貌でそのような歯の浮くセリフを言われれば、どんな女性だって悪い気はしない。普段そういった言葉は歯牙にもかけないユーゼリアも、酒の力もあってか「あらやだー」と瞳を輝かせていた。
「彼女に何か用でもあるのか」
「お前には言ってない。僕がお話してるのはこのお嬢さんだ。黙っていたまえ」
なんとなく気に入らないアシュレイが割って入ると、同じ人物から発せられた声とは思えないほど冷たい声が青年――フラウから発せられる。
あまりの言い草にカチンと来たアシュレイが拳をプルプルさせつつ耐えているのを尻目に、再びフラウが同じ質問を繰り返す。素面なら兎も角、酒気を帯びたユーゼリアはそんな水面下どころか水面上にも表れた攻防には全く気付かず、ほわほわとした心地のままにっこり答えた。
「ユーゼリアよ」
「凛とした響き、清廉な貴女に相応しい名だ。どうぞお見知り置きを、レディ」
「ねえアッシュきいた? せいれんだってー!」
「……良かったな」
「うんー! えへへ」
頬に照り焼きのタレをつけたまま嬉しそうに笑うユーゼリア。いつもは大人びて見せている彼女の、珍しく年相応な反応に、アシュレイはむかつく青年のことも全てどうでもよくなってきてしまった。彼女が楽しいなら、まあ、いい
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