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打球は快音響かせて
高校2年
第二十四話 可能性
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てニコニコとしている。案外性格が悪いかもしれない。

「そして、“浅海ならばこんなザマにはならない。あいつは女だが、監督としての器が無いわけじゃない。少なくとも、あのメガネよりはマシ”だと仰られたんです。そして私はそれが本当なのか、応援席に居た野球部の生徒に確かめてみる事にしました。すると、彼は言う訳です。“僕らの事1人1人を気にかけてくれている、すごく良い先生です。指導も具体的で、言葉が分かりやすいし、明らかに戦力外な僕を、B戦なら通用するくらいまでにしてくれました”とね。ああ、ここまでに思われている浅海先生ならば、監督を任せても差し支えないだろうと、その時私は納得致しました。」
「す、すいません。その話を聞いた生徒というのは…」
「あぁ、足を怪我していた2年生でしたね。」

浅海はその時、ジーンと胸の奥が熱くなった。
好村翼。その生徒は明らかに翼だった。中学時代は野球部ですらなかった、木凪からの越境入学生。そんな翼に目をかけ、指導してきた事が、こんな形で返ってくるとは、巡り合わせの妙に心が震える。もちろん、見返りを求めていた訳ではない。が、嬉しくならないはずがない。自分の知らない所で、自分を褒めてくれていた。恩を語ってくれた。教師として、指導者としてこんな嬉しい事はない。

「さて、浅海先生。後はあなた次第ですが、どうですか?引き受けてくれますか?」

校長が尋ねる。
浅海の答えはもう既に決まっていた。
一度は諦めた夢。
監督として甲子園に出るという夢。
それが再び戻ってきた。
お世話になった前監督と、生徒のおかげで。
逃げる訳にはいかないではないか。

「はい!任せて下さい!」

浅海の表情は実に晴れやかで、一点の曇りもなかった。









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