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打球は快音響かせて
高校2年
第二十四話 可能性
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はかえって浅海に感心した。観客席から、ちょっとした選手の表情まで見抜いていたとは。

「……あの時、君は試合を諦めた。違うか?」
「ヤバいな、とは思いました。」
「いやいや、あのワンプレーから明らかにリードがおざなりになったぞ。テンパってたならまだしも、悟ったような笑顔を見せたお前がそうだったはずはない。」

本当に、この人は。宮園は思う。
観客席から見ていただけで、どうしてそんな心の中の事まで分かるのだろうか?確かに、宮園はあの時試合を諦めた。1点差で負けるのも5点差で負けるのも変わらないと思った。やっぱりこの人は凄い。女性だから高校野球はしてなかったはずだけど、その分、人間を知ってる気がする。

「……なぁ宮園、君は自分で自分自身を見限ってるように思うが、高校生のやる事なんて本当にどう転ぶか分からないんだぞ?君らにはまだ可能性があるんだ。その可能性は歳をとるごとに消えてなくなっていく。今その可能性を追わないでどうするんだ?歳を取ってからでは遅いぞ?」
「……」

巷に溢れる、青臭い理想論でも、何故か浅海に言われると納得できるような気がしてしまう。
言葉はその中身と同じくらい、“誰が”言うのかも大事だ。

「可能性を信じて努力して裏切られるのが怖いのか?だったら心配なんて必要ない。たかが野球じゃないか。失敗したって死ぬ訳じゃない。勝てると思って必死にやって、例え負けたとしても泣いてそれで終わりだよ。だからさ、あと一年、必死でやってみろよ。君の可能性を私に見せてくr」
「だったら!」

宮園は浅海の言葉を遮った。
確かに浅海の言葉は納得できる。自分の中でも、前から気づいていた事だった。
自分は努力が裏切られるのが怖い。だからレギュラーがまず間違いない三龍に来たし、下手すると3年間ベンチ外もあり得る商学館の誘いを蹴った。それは前から分かっている事だった。
それよりも、この機会に言っておかないといけない事がある。このまま話を聞いて納得するだけだと、結局何も変わらない。宮園はそんな気がした。

「浅海先生が監督をやって下さい!」
「え?」

唐突な宮園の頼みに浅海は戸惑った。
宮園は一気にまくし立てる。

「乙黒監督じゃ、どうやっても結局海洋や帝王大には勝てません。球が速いだけの鷹合に固執するし、戦略も何一つ考えていない!正攻法でウチが勝てるはずが無いのに。浅海先生の方が明らかに監督に相応しい、それは浅海先生自身も分かっているでしょう?」
「そ、それは…」

返事に詰まる浅海相手にも、宮園は容赦しない。むしろ、どんどん口が回り始める。

「女性だから無理だとか、自分ではどうする事もできないとか、言わないで下さいよ?僕らに諦めない事、可能性を追う事を求めるなら、先生も諦めないで下さい。コーチなんて、
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