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噛ませ犬
第四章
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第四章

「負ける奴も必要なんだよ」
「そして勝つ奴もですね」
 兆州は自然とだ。新条の言葉を受けてこう述べた。言いながらそうしてだ。彼もまた食べていく。今度は鍋の中の餅を己の丼の中に取っていた。
「必要なんですね」
「プロレスだからな」
 新条は屈託のない笑みで述べた。
「だから必要なんだよ」
「プロレスだからですね」
「そういうことだよ。俺も御前もレスラーだよな」
「はい」
「プロレスは格闘技であると共にショーなんだよ」
 よく言われていることだ。だからこそ楽しいのである。
「ショーに徹するんだ。いいな」
「じゃあ新条さんはこれからもですね」
「噛ませさ」
 ここではあえてこの表現を使う新条だった。
「このままいくからな」
「わかりました。じゃあ次の試合もですね」
「噛ませでいくさ。それじゃあな」
「ええ、頑張って下さい」
 二人は店でちゃんこを食べながら話したのだった。それぞれの特製の丼を使いながらだ。そして次の試合の日にだ。新条はまたトレーニング中に猪場に言われた。
 だが今日猪場が彼に言ったことはだ。こうしたものだった。
「今日はですか」
「そうだ。メインだ」
 こうだ。彼は言ってきたのである。
「どうだ?トリを務めてみるか」
「じゃあ俺の今日の相手は」
「兆州はどうだ」
 その長い顎の顔をにやりとさせてだ。猪場は新条に問うた。
「あいつとだ。正面からぶつかるか」
「メインイベンターとして」
「御前はずっと噛ませだったがな」
 このこともだ。猪場は新条に言ったのだった。
「だがこれからは違うぞ」
「俺がメインイベンターで活躍して」
「悪い話じゃないな。どうだ?」
 猪場は新条の目を見て問うてくる。彼は新条が受けると確信していた。
 しかしだった。新条はだ。静かな表情でこう答えたのだった。
「いえ」
「いえ?」
「はい、俺はいいです」
「メインイベンターになりたくないのか」
「なりたいです。けれど俺はやっぱり」
「今までの前座でいいのか?噛ませ犬で」
「その方がいいです」
 こうだ。その猪場に対してだ。新条は答えた。新条はダンベルをあげている途中だったがそれを止めてだ。そのうえで自身もトレーニング中だった猪場に答えたのである。
「やっぱり」
「おかしなことを言うな。しかしな」
「メインイベンターならですね」
「凄いぞ。人気も鰻登りになってな」
「お客さんの歓声もですね」
「そして勝てるんだ」
 噛ませ犬にはないだ。それもあるというのだ。
「そうなるんだぞ。それでもか」
「はい、やっぱり前座のままでいいです」
「どうしてもだな」
「すいません」
 ここでは頭を下げてだ。新条は猪場に答えた。
「それは社長か兆州にお願いします」
「わ
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