2ndA‘s編
第六話〜交渉の入口〜
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痛みで感覚のなくなってきていた手が、自然とワイヤーを離す。支えのなくなった身体は室内の床に転がることで、やっとその動きを止めた。
「ハァ……ハァ……」
先程まで落ち着いていたのが嘘の様にライの呼吸が乱れ始める。
しかし、ここで呆けるわけにもいかない為に、横たわっていた自分の身体に喝を入れて動き始める。
「怪我は――」
質問をしようと今まで抱き込むように抱えていた女性に声をかけて、セリフの途中でその口を閉じた。
気絶していたのだ。抱えていた女性がデバイスを持っていた為に魔導師であることは予測がついたが、どうやら彼女はバリアジャケットを展開していない生身の状態で衝撃を受けることには慣れていなかったらしい。
取り敢えず、目に見える範囲で外傷の確認をした後、その場から離れるためにライは彼女を背負う。そしてそのビルの非常階段で一階まで移動し、裏口から路地裏に出る。
すると、新たに大きな魔力反応を感知し、ライは身を隠すように路地裏から顔を少しだけ出して上空を伺う。
そこには前回とは異なったデバイスを持ったなのはとフェイトの二人が、それぞれヴィータとシグナムの二人と交戦を開始していた。
(デバイスが未来の二人が持っていたものに似ている)
自分の中の記憶と照らし合わせて、二人のデバイスの差異や酷似している部分を洗い出して行く。
そしてハード面においてこちらの世界の方が数箇所優れている部分も見受けられた為に、ライはこの世界が自分の訪れた世界の過去ではなく、それに限りなく酷似した平行世界ということに確信を抱いた。
(これからどうするか。魔法なしではシャマルさんと顔合わせはできないだろうし。ザフィーラも誰かと交戦中。……今回も見送るか)
そこまで考えたときにライはある感覚を覚える。それはある意味で慣れ親しみ過ぎている感覚。それは元の皇歴の世界では頻繁に、そしてミッドチルダでは数度感じたことのあるものである。
(見られているな。蒼月はステルスモードで待機中。トレースされたのは彼女か)
ちらりと背後に視線を向けるが、視界に入ったのは特徴的な緑の髪だけであった。
彼女がデバイスを持っていることから記録が残ることを踏まえ、これまで肉声や念話の類を使用していなかった。だが、ここまで自分の動きに制限がついてしまったのはライにとっても計算外である。
(………………一か八か……かな)
ぐるぐると回る思考を続けた末にライは一つ決断し、振り向いた。
振り向いた先は視線を感じた方向、恐らくはサーチャーがあるはずの場所。
「――――――」
発声をせずに口だけを動かす。
たった六文字の言葉をライは口パクで“喋る”。
今できる最大限の行動。それを終えたライは歩き出そうとし
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