2ndA‘s編
第六話〜交渉の入口〜
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彼女と対面するように立ったため、一時的にヴィータの姿をライは見失う。
しかし今は彼女ではなく、目の前の烈火の将の対処が先だ。本能が訴えてくる警鐘を意図的に無視し、見慣れているが細部の違う炎を纏った剣を迎え撃つ。
横凪に振るわれたシグナムの剣に対し、ライは身を低くし下から上にすくい上げるように手に持った鉄パイプを走らせる。
「ッ!」
澄んだ音が響く。
構造が空洞であるため、腕が痺れるほどの衝撃を受ける。渾身の力で振るわれたそれはパイプを曲げる代わりに、ほんの少し横一線の斬撃を持ち上げた。
体の近くを通った刀身が纏う炎に炙られる感触を味わいながらも、ライは足を動かす。
シグナムとヴィータの二人は彼がそのまま出入り口に向かうと予想し、シグナムの影に隠れるようにヴィータはその出入り口の方へ回り込もうとした。
「「!?」」
驚きを表したのは二人。だがそれは突撃してきたシグナムとヴィータの方だ。
あろうことか、ライは屋上の出入り口ではなく逆方向。ビルとビルの隙間にある裏路地へ向けて飛び降りたのだ。
「バカ!死ぬ気か!!」
咄嗟に叫んだのはヴィータ。彼女はシグナムの背後にいた為に“それ”に気付いていなかった。
ライと出入り口を直線で結ぶ様に一本の線が引かれている。シグナムはそれにすぐに気付く。
その線の正体はライが鉄パイプと一緒に拝借していたワイヤーである。出入り口の近くに結ばれたそれをライは女性を抱えている手に握りこんでいた。
数メートルの隙間になっているビルとビルの間。そこをライは落下していく。
曲がって使い物にならなくなったパイプを捨てると同時に、持っていたワイヤーが張力を生む。ライは咄嗟に空いた右手でワイヤーを掴みバランスをとる。命綱になっているそれは掌を削ぎ落そうとしてくるが、彼は歯を食いしばって耐えた。
ワイヤーが張るとライの身体は振り子の様に揺れる。飛び降りた際に勢いが付いたために、ビルの屋上のヘリを支点にした円軌道をライの身体は描く。
「ッ!!……ケホッ」
それなりの勢いを持った質量となった身体がビルの窓に叩きつけられる。
抱えた女性を傷つけないように、背中に当たるよう体の向きを変えたのだが、その衝撃は強かった。
肺の中の空気を吐き出しそうになるのをこらえて呼吸が一瞬できなくなった彼は、咳き込むように息を吐いた。
振り子の勢いがなくなったのを感じながら、ライはぶつかった窓に視線を向ける。
すると放射状の罅が入った窓ガラスがそこにはあった。
好都合と思いながら、ライは一度壁を蹴ることで勢いをつけてから、膝蹴りを窓に叩き込む。
二度の衝撃に耐えることのできなかった窓ガラスは砕けるように割れ、ライはその勢いのままビルの中へ飛び込んだ。
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