第三章
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「天下が泰平であることです」
「それ故に」
「如何でしょうか」
己の俸禄の半分でだというのだ。
「そうして下さいますか」
「面白いですな」
島は石田の言葉をここまで聞いた、そのうえでだった。
確かな笑顔になってだ、石田にこう言った。
「では」
「出仕して下さいますか」
「そう仰った方は聞いたことがありません」
島もだというのだ。
「それだけに面白いです、それでは」
「はい、それでは」
「それがしでよければ」
島は頭を下げて石田に言うのだった。
「微力なれど」
「それでは」
こうしてだった、石田は島を己の家臣として召し出すことが出来た。石田の家臣であるが実質的には彼の盟友、そして豊臣家の家臣だった。
このことを聞いてだ、秀吉は唸る顔で秀長に言った。この場には石田はおらず茶室の中で二人で話している。
秀長に茶を淹れつつだ、彼は言った。
「佐吉がまさかのう」
「島左近を召し抱えることはですか」
「思わなかったわ」
秀吉にしても予想出来なかったというのだ。
「まさかのう」
「実はそれがしも」
「御主もか」
「はい、これまで兄上のどの様な誘いも乗りませぬでしたな」
「全くじゃった」
その通りだとだ、秀吉は苦笑いで茶を飲みながら答えた。今の苦笑いは茶を飲んでそうなったのではない。
「わしが声をかけてもな」
「天下の人たらしと言われた兄上ですら」
「人を誘い出すことには自信がある」
秀吉自身もだというのだ、小柄な猿面冠者であるが妙に愛嬌があり人懐っこい。秀吉には男はおろか女まで惚れさせるものがある。
だがその彼でも召し出せなかった島をだ、石田はだったのだ。
それでだ、秀吉はこう言うのだ。
「佐吉はただ己の石高の半分を出しただけではない」
「心もですな」
「そこまで左近を買っているのじゃ」
「そして左近もそれがわかったからこそ」
「だからこそじゃ」
島は応えたというのだ。
「そしてあ奴は世に戻ったのじゃ」
「そうなりましたな」
「うむ、そうじゃ」
「己の半分になってもらい天下と豊臣家に尽くしてもらいたい」
「佐吉は見事な者じゃ」
秀吉は唸ってこうも言った。
「全く以てな」
「己より天下と豊臣のことを考えてくれますな」
「全くじゃ、頑固で融通が利かずそのせいで嫌われもするがな」
石田を嫌う者も多かった、秀吉の腰巾着とすら言う者もいる。しかし実際は秀吉に厳しいことを言うことも多い。秀吉にとっては耳の痛い男でもあるのだ。
だが、だ。秀吉はその石田をわかっていた。彼はどういった者かというと。
「あ奴の心は綺麗じゃ」
「淀みがありませんな」
「ただ純粋に天下と豊臣のことを考えてくれておる」
「私の心なしに」
「それが左近にも伝わったのじ
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