第二章
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「それが何か」
「お話があります」
「ははは、またでござるか」
島は石田の言葉にまずは笑って返した。
「その話ですか」
「左様ですが」
「秀吉様のご使者にも何度もお話していますが」
「お話だけでも聞いて頂けませぬか」
石田は礼儀正しい、しかも一歩も退かぬ声で島に返した。
「ここは」
「ふむ、どうやら」
島は石田のその声を聞き目を見た、見れば一点の曇りもない確かな目である。
その目を見てだ、彼も決めた。
「お聞かせ下さい」
「それでは」
こうしてだった、石田は島と共に彼の庵に入った。そうして。
庵の中で水、庵の井戸のそれを飲みつつそれで話をはじめた。石田は自分の向かい側に座している島にこう言った。
「それがしがここに来た理由は察しておられますな」
「それがしに出仕せよというのですな」
「はい」
まさにだ、それだというのだ。
「そうして頂きたくこの度参上しました」
「そうですか、しかし」
「既に秀吉様からお話は伺っております」
石田は島に言わせなかった、そこから先は。
「それでなのですが」
「申し訳ありませんがそれがしはもう」
「半分でどうでしょうか」
石田はここで島にこう言った、真剣であるがその口元と目元には微笑みがある。知に満ちたその端整な顔にだ。
「それで」
「半分とは」
「それがしの俸禄の半分で」
「といいますと」
「それがしが島殿をお抱えします」
つまりだ、彼の家臣になってもらうというのだ。
「そのうえで豊臣家にお仕えして頂ければ」
「石田殿の家臣になれと」
「そうです」
「そのうえで、ですか」
「豊臣家、そして天下の為にです」
その軍略を使ってもらいたいというのだ。
「そうして頂きたいのです」
「石田殿の俸禄は」
「四万石です」
それが石田の今の俸禄だ、まだ若く家柄もよくないがそれでも万石取りの大名であるところに秀吉の彼への信頼の程が伺える。
その彼がだ、こう言うのだ。
「その半分です」
「二万石ですか」
島はこの石高を言った。
「それがしは」
「秀吉様からより多くの禄を出してもらっていますな」
「左様です」
「しかしです、その禄はそれまでのこと」
「それまでといいますと」
「例え十万石でも十万までのこと、ですがそれがしの場合は」
ここからだった、石田が言うことは。
「それがしの俸禄の半分です」
「では四万石から増えれば」
「島殿の禄も増えます」
そうなるというのだ、二万石はおろか。
「十万石になれば五万石です」
「そうですか、しかしそれでは」
石田の取り分が減るというのだ、幾ら何でも自分の禄の半分を出せば。
「それでもよいのですか」
「何か問題でも」
石田はその微笑みのまま島に返した。
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