第三章
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その顔と声でだ、彼等にこう言うのだった。
「元の仕事に戻れ、報酬はおって出す」
「わかりました、それでは」
「これより」
「ご苦労だった」
またこう言う教皇だった、しかしここでだった。
彼等は教皇を見るとだ、普段は時折振り向く枢機卿の方に顔を向けていなかった、それどころか顔をいささか左に向けてさえいた。
そのうえでそそくさとした感じで教皇の座を後にした、枢機卿はその後ろを無言でついていくだけだった。
その枢機卿も見てだ、彼等は思うのだった。
「何かおかしいな」
「ああ、教皇様のご様子がな」
「何故あそこまで可愛がっておられた公爵様を殺されたのにな」
「犯人の捜査を打ち切られたのだ?」
「教皇庁の力をもってすれば必ず見付かる」
それこそだ、欧州の何処にいてもだ。その犯人が。
「そして必ず復讐を果たせるというのに」
「何故教皇様は突然捜査を打ち切られたのだ」
「迷宮入りになろうとしていても犯人は必ず見付けられるのに」
「どういうことだ、それは」
「しかもだ」
ここでだ、彼等はこのことについても思うのだった。
「教皇様のお顔がどうも険しい」
「うむ、どうもな」
「お声にしてもな」
「妙にな」
「普段は時折見られる枢機卿様からも顔を背けておられるう様にも見えた」
「おかしいな、どうにも」
「妙だ」
彼等もこう感じた、しかし捜査は打ち切られた。このことはもう決まった。
捜査は打ち切られやがてローマでもイタリアでも人々の言葉に出ることはなくなっていった。そして。
暗殺されたガンディア公の代わりにだった。、ヴァレンティーノ枢機卿は還俗しヴァンレティーノ公爵となり教皇軍司令官となった、そのうえで。
その軍略と謀略を駆使して進撃を続けた、教皇領は日増しに拡大していった。
教皇軍はまさに破竹の進撃を続けていた、その彼等を見てだ。
ローマの市民達はあることを思った、それで囁き合うのだった。
「まさかな」
「ああ、まさかとは思うが」
「滅多なことは言えないが」
「ひょっとしたら」
だが彼等は多くを言わなかった。自分達の言葉はボルジア家の者達の耳に入ればどうなるかは言うまでもないからだ。
だから彼等は言葉を止めた、しかし。
諸国の外交官達も気付いた、そしてだった。
このことについて調査をしていたフィレンツェのニコラ=マキャベリもだ、こう部下に言うのだった。
「ガンディア公暗殺事件のことですが」
「あの事件のことですか」
「犯人は見付かりませんよ」
こう部下に言うのだった。
「絶対に」
「見付からないですか」
「はい、何があろうとも」
「ですが」
ここでだ、部下は怪訝な顔になりマキャベリに言った。
「あの事件のことは」
「貴方もわかっていると
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