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ストライク・ザ・ブラッド 〜神なる名を持つ吸血鬼〜
天使炎上篇
15.天使炎上
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その下のシャツのボタンを外す。
 そして互いの素肌を密着させる。
 ラ・フォリアは、自分の唇を犬歯で少し傷つける。かすかな痛みが唇へと伝わり、口内に鉄の味が広がる。

「……彩斗」

 かすかに彼の名を呟いた。ここで彩斗に死なれるわけにはいかない。
 ラ・フォリアは、死んだように眠る彩斗の唇に自らの唇を押し当てた。まるで死体のように冷たい感触。
 ラ・フォリアは、血を彩斗の口内へと自らの舌とともに流し込んだ。
 その瞬間、強い力で抱き寄せられた。意識がなかった彩斗は、ラ・フォリアの血を吸い取るように強く唇へと触れる。
 口内の血を吸い付くした彩斗が唇から無防備に晒される首筋へと吸い寄せられるように肌に牙を立てる。

「ん……彩斗?」

 くるはずの痛みがラ・フォリアにはこなかった。
 それは、彩斗が首筋へと牙を突き立てる寸前で止めていたのだ。

「ラ・フォリア……お前はいいのかよ?」

「はい。うちの娘に手を出すような不埒なものがいれば、騎士団と軍の総力を持って叩き潰すと。その覚悟があるならかかってこいや、ともうしている父がいますがわたくしは問題ないです」

「……お前は良くても、俺が良くない状況になりそうだな」

 唇を歪めた彩斗に、ラ・フォリアは一度クスクスと笑った。

「ですが、真祖さえも上回ると言われているあなたなら、わたしの父とも渡り合えるかも知れませんね」

 彩斗にもう一度軽く口づけをし、いつものように悪戯っぽく微笑む。
 そりゃ勘弁だわ、と彩斗は顔を真っ赤にしながら苦笑いを浮かべる。

「アルディギア王家が長女、ラ・フォリア・リハヴァインの名において命じます。“神意の暁(オリスブラッド)”、緒河彩斗、わたしの血を吸いなさい」

 少しの間を開けて、彩斗は恥ずかしそうな顔をしたのちに真剣な顔になる。

「ラ・フォリアの親父でも軍隊でも相手してやる。だから夏音を救うために力を借りるぞ」

 彩斗がラ・フォリアの身体を優しく抱き寄せ、その露わになる首筋へと牙を突き立てた。




「動き出したか」

 氷の中に閉じ込められていた模造天使(エンジェル・フォウ)が、目を開けた。

「心象風景の投影による表層人格の破壊と再構築か。計算外の事象だったが、まあいい。これでもう、お前をこの世界に繋ぎ止めるものは完全に消えたのだな……夏音よ」

 どこか救われたような表情で、賢生は呟く。
 突如として凄まじい轟音とともに大地が震える。
 模造天使(エンジェル・フォウ)が眠る塔の根元。分厚い氷ぶち破って、巨大な獣が現れる。
 凄まじい振動が大気を歪めて、陽炎のような肉体を形成している。緋色の鬣をもつ、双角の召喚獣。

「──第四真祖の眷獣だと!?」


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