三十二 真夜中のお茶会
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「…………」
「沈黙は肯定と見做すわよ」
肯定も否定もせずにナルトはくんと鼻を鳴らした。自身の前にある花瓶をそっと眺める。活けられた溢れんばかりの花々は美しく微かな芳香を漂わせているが、どこか毒々しい。
「それより俺に聞きたいことがあるんじゃないか?」
手元の杯を弄ぶように揺らしながら、ナルトは肘掛にその身を預けるようにして座り直した。杯に口付ける。
「俺が十日間、何処で、何をしていたか。それを聞きたいんだろう?大蛇丸」
口を杯につけながらナルトがそう言うと、大蛇丸は愛想笑いを浮かべた。ナルトの動向を見守る。咽喉を潤すように茶を呑むナルトを目にして、彼は内心含み笑った。
「良い茶葉を使っているな」
一口呑んだナルトが静かに言葉を告げた。
香りに劣らぬ深い味わいが口に広がる。杯中の液体が渦を巻き、甘い香りが立ち上った。馥郁たる茶の香りは茶葉の品質の良さを窺わせる。
しかしながらその香気に含まれた独特の香りが、ふわりとナルトの鼻腔を擽った。そのちょっとした違いを敏感にも感じ取った彼だが、前以て予想していたために、淡々と言葉を続ける。
「味も香りに負けていない。やわらかい口当たりに深い味わい…。文句なしに美味しいよ」
だが直後、彼は杯を眼前に掲げた。口元を隠し、双眸だけを大蛇丸に向ける。その表情からは笑みは消え、強い眼光だけが大蛇丸を射抜いていた。
「余計なモノさえ入っていなければな」
大蛇丸の肩が跳ね上がる。彼自身も手にしていた杯の中の茶がぴちゃんと波打った。
真っ直ぐに目を合わせてくる青い瞳を避ける。己の心の奥底まで見透かされているような錯覚を覚え、大蛇丸はナルトから顔を背けた。
「毒だな。大方自白剤か」
面倒そうにそう言うと、ナルトは身を強張らせている大蛇丸の瞳を覗き込んだ。何も言えずにいる彼に向かって「君麻呂にも試したんだろ」と囁く。
「俺が何をしていたかを調べるために」
袖に隠し持っていた即効性の自白剤。それを混入した張本人は言い訳しようと口を開いた。だがカラカラに渇いた唇からは何も出て来ない。ついさっき茶を飲んだはずだというのに。高鳴る鼓動と共鳴するかのように、茶の波が静まらない。
「何の話かしら…」
無理に搾り出した声は不明慮な呻き声にしかならなかった。だがナルトの耳にはしっかり届いたのだろう。くつりと笑みを浮かべる。部屋の主はとうに取って代わられていた。
「まあ、君麻呂に試したのは薬ではなく幻術だろう。病気持ちの彼にこんな強い薬を投入したら、どんな副作用が出るかわからないからな」
「君麻呂に幻術のたぐいが効かなかったのは、やはり貴方が原因ね…」
背中に滲む冷たい汗を感じながら、大蛇丸は辛うじて言葉を返した。
空白の十日間を知るために彼は
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