三十二 真夜中のお茶会
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ブトは思わず空を仰いだ。瞬間、部屋の主と目が合い、ひゅっと息を呑む。
ただでさえ吊眼の大蛇丸が目を細めている。蛇の如きねっとりとした視線が、いっそ殺してやろうか、と語っていた。それぐらい彼の苛立ちは最高潮に達していた。
「この不始末、どうつけるつもりなのかしら?―――カブト」
「しくじったのは相手だよ」
突如、声が響いた。
その澄んだ第三者の声は、室内の息苦しさも、そして大蛇丸の不機嫌をも一瞬で払拭する。
何時の間に入ってきたのか。部屋の隅に置かれた安楽椅子で、彼は静かに足を組んでいた。固く閉ざされていたはずの窓のカーテンがさらさらと揺れている。不躾な侵入者は、「お茶会に俺はお呼ばれしてくれないのかな?」とふてぶてしく言い放った。
「………今、迎えを寄越そうと思っていたところよ」
突然の登場に驚愕を隠せないまま、それでも大蛇丸はうそぶいてみせた。心中身構えながらも、愛想笑いで迎える。
「ナルト君」
組んだ足に手を置いたまま、ナルトはにこり微笑んだ。
「さっきの言葉はどういう意味?」
訝しげな眼差しで大蛇丸はナルトを見つめた。その傍らで弾かれたようにカブトが顔を上げる。茶器がガチャリと音を立てた。
「これは僕の問題だ!余計な口出し、」
「お黙り。カブト」
大蛇丸にぴしゃりと一喝され、カブトは押し黙った。しかしながらその視線はナルトと大蛇丸を交互に往復している。「続けて。ナルト君」と大蛇丸に促され、ナルトは再び口を開いた。
「同盟国さんの不手際さ。彼は関係ないよ」
「…………見ていたの?」
「帰り際に、ちょっとね」
涼しげな顔でそう話すナルトに、大蛇丸はどこか薄ら寒いものを感じた。
木ノ葉崩しの計画について、ナルトには一言も伝えていない。それなのに、目の前のこの子どもは何処まで知っているのか。
視線から逃げるようにナルトの茶を入れる。そうして、服の袖に忍ばせておいたモノを、大蛇丸はそっと注ぎ入れた。
「いつ帰ってきたの?」
「それを俺に聞くのか?」
質問に質問で返す。どうせ君麻呂が戻って来た時点でわかっているだろうに、といった風情で、ナルトは大蛇丸が手ずから入れた茶の香りを楽しんだ。
彼と向かい合わせに座っている大蛇丸は、寸前と違って椅子から身を起こしている。自身もカブトの入れた茶を口にしながら、大蛇丸は不意に話題を変えた。
「ザクを助けたそうね」
香り立つ琥珀色の液体を覗き込んでいたナルトが目線だけを大蛇丸に向けた。素っ気なく「ただの気紛れだ」と一言返す。素気無い返事にも拘らず、大蛇丸は身を乗り出した。
「貴方ほどの人物が気に掛ける…。隠された才能でもあるのかしら?」
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