第五章
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「襲い掛かってきやすから」
「お約束だね」
「そうでやんす、とにかくタチの悪い連中でやんす」
「そんな連中は許しちゃおけないね」
おみよはこのことは彼女の性分から言った、昔からそうした曲がったことや人の道に外れたことをする奴が嫌いなのだ。
だからだ、籐次にこう言うのだった。
「今晩にでもね」
「まさかと思いやすが」
「ちょっと行って来るよ」
軽い調子で籐次に述べた言葉だ。
「日本橋にね」
「姐御、相手は」
「あたしが負けると思ってるのかい?」
おみよは自信に満ちた笑みで籐次に返した。
「まさか」
「いえ、それは」
「そうさ、あたしは今まで誰にも負けたことがないんだ」
「だからでやんすね」
「そんなちんけな連中にもね」
到底だというのだ。
「負けないさ」
「それじゃああっしも」
「あたし一人で行くよ」
籐次には行かせなかった、一緒には。
「勿論他の奴にもね」
「姐御一人で行くんですかい」
「今日は賭場は休んでね」
寺社で夜に開かれるそれはというのだ。
「ちょっと行って来るよ」
「それで悪い奴等をですかい」
「ああ、そうしてくるからね」
茶を飲みながら軽い調子で言ってみせる、勿論籐次にも行く本当の理由は隠している、そのうえでの言葉だ。
「わかったね」
「へい、それじゃあ」
「そういうことでね」
こう話してだ、そしてだった。
おみよはその日の夜に日本橋に行った、夜の日本橋は夜盗のせいか誰もおらず静まり返っている。その日本橋の丁度橋の手前でだった。
何かが見えた、灯りのない真っ暗闇の中で。
男達が争っていた、柄の悪い声が聞こえてくる。
「くっ、こいつ強いぞ」
「この浪人相当だぞ」
「何だこいつ」
「只者じゃねえぞ」
「浪人、まさか」
おみよはその声を聞いてすぐに察して呟いた。112
「あの旦那だね」
そう思い橋の方に足を進める、すると夜の闇に慣れた目に。
奥田が見えた、彼は両手に刀を持ちそのうえで夜盗達を相手にしていた。
一人、また一人と倒していく。しかしそれは峰打ちだ。
それで倒していく彼等にだ、夜盗達は戸惑っていた。
「こんな強い奴ははじめてだ」
「どんな奴なんだ」
「二刀流かよ」
「まさかここまで腕が立つ奴が出て来るなんてな」
「刀でも奪おうと思ってたが」
「これは厄介だぜ」
奥田を囲みつつ歯噛みしている、相手になりそうにもなかった。
おみよはその場を見てこれは何もしないでいいと思った、最初は何かあれば助太刀をしてそこから知り合いになろうと思っていたが。それで物陰に隠れてそのうえで闘いが収まるのを見守ることにした。偶然を装って会うのはまたの機会にしようと思いながら。
闘いは奥田が一人また一人と倒していく
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