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女の首
第二章
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 穴からまずは、小さくだった。
 女の首が徐々に出て来た、そのうえで。
 出て来るとやはり徐々に大きくなる、それで人間の首の大きさになった。
 見れば黒髪は綺麗でそれを上で束ねている。漢人の女の髪型だ。切れ長の目が印象的な顔を綺麗に化粧している。口紅も映えていてそそるといった顔だ。
 その顔が宙にふわふわと浮かぶ、そして麺を一杯食うだけの時間漂っていたかと思うと徐々に小さくなっていく首の付け根から引っ込んでいく。
 その一部始終を見てだ、徐は親父に言った。
「本当だったな」
「なっ、俺の言った通りだっただろ」
「ああ、ただな」
「ただ?」
「どういう理屈なんだ、これは」
 穴から小さな女の首が出て来て大きくなっていき宙に浮かんでは小さくなって戻る。それはどういうことかというのだ。
「一体」
「さてな、それはな」
 親父は徐のその問には肩を竦めるばかりだった。
「俺にもな」
「わからないのか」
「わしもだ」
「僕もです」
 他の客達も言う。
「どうして女の首が出て来るのか」
「大きくなったり小さくなるのか」
「それはどうしても」
「わかりませぬ」
「身体はないのか?」
 除はこうも考えた。
「女には」
「身体?」
「ああ、首だけだけれどな」
 このことをだ、親父にも問うたのだった。
「どうなんだよ、それは」
「そういえばないな」
 親父も徐の言葉に気付いてこう言った。
「首だけでな」
「こいつは穴を塞いだらどうなるんだ?」
「そうしたら出て来ないんだよ」
「じゃあこの穴の中にいるのか」
「そうだろうな、とはいってもな」
 親父もだ、その穴を見つつ徐に答える。
「この穴は深くないしな」
「向こう側は見えないな」
 除は穴を覗いてみた、壁を通り抜けてはいない。
「壁の向こう側からは出ていないな」
「そうだろ、あと俺達は意識せずにな」
「ただ出入りしているだけだったな」
「見ての通りだよ、あんたがな」
「あっ、また出て来たな」
 そうした話をしているとだった、まただった。
 女の首が出て来た、それでまた大きくなって浮かんで小さくなって穴の中に戻る。見れば女の首は彼等に気付いている様子もない。
 ただそうしているだけだ、それで徐はまた言うのだった。
「変わってるな」
「そうだろ、俺もそう思うよ」
「一体何なんだ」
「身体もないしな」
「これは困った、いや」
「いや?」
「ひょっとしたら偉い先生なら知ってるか」
 除はこんなことを言い出したのだった。
「学者さんならな」
「学者さんならか」
「今この国で一番凄い学者さんっていうと」
「王先生はどうだい?」
 親父はここでこの人物の名前を出した。
「あの方ならな」
「王先生?」
「王守仁先生だよ
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