第四章
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「日本に対しては」
「噂で聞いたよ、彼は学生時代におかしな陰謀論を読んだらしい」
「陰謀論?」
「それこそハーストに書かれている様なね」
そうした出鱈目な代物を読んだというのだ。
「シオン=プロトコールの日本人版の様なものを」
「ああ、田中上奏文か」
「いや、田中上奏文とはまた別のね」
それを学生時代に読んだというのだ、ルーズベルトは。
「それ以来日本を異様に嫌っているらしいんだ」
「じゃあ本当に」
「うん、まずいよ」
エセックスは心から懸念する顔で言った。
「ルーズベルトは日本と戦争をするつもりだ」
「戦争はしないって言ってるけれどね」
「すると思うよ、僕は」
エセックスはルーズベルトの日本への異様な敵意以外の根拠も出した。
「合衆国と日本は太平洋を巡っても対峙しているからね」
「そして中国での権益もだね」
「ルーズベルトはこのことについて平和的に解決するつもりはない」
日本への敵意故にだ。
「だからね」
「日本と戦争になるんだね」
「なるね、そしてその時は」
これまで以上に顔を曇らせてだった、エセックスは言った。
「ワシントンもどうなるか」
「戦争一色になるだろうね」
「そうなったら国中が日本への敵意で溢れ返る」
当然ワシントンもだ。
「カルフォルニアは特に酷くなるだろうけれど」
「あそこはまた特別人種主義が強いからね」
やはりカルフォルニアはアメリカにおける人種差別主義のメッカなのだ、人種的偏見がどんなものか見たければカルフォルニアに行けばいいと言えるまでに。
「とんでもないことをするだろうね」
「だろうね、そしてワシントンも」
彼等が住んでいるアメリカの首都もだというのだ。
「愚か者が出るよ」
「そして愚かなことをするかな」
「そうならないことを祈っているよ」
エセックスは苦々しい顔でコーヒーを飲んだ、その顔はコーヒーの苦さでそうなったのではないことはワルトもわかった、彼も同じだから。
ルーズベルトは三選した、苦戦はしたが。その就任式を見てエセックスはここでもワルトにこう言ったのだった。
「決まったよ」
「戦争がだね」
「うん、これでね」
ルーズベルトの三選が成ったからだ。
「もうね」
「そうか、今の世界を巻き込んでいる戦争に」
「アメリカも入るよ」
「ドイツとイタリア、そして日本だね」
ワルトも言った。
「なるんだね」
「そうなるよ、本当にね」
「しかしまだ言うね」
「私は皆さんの夫や息子を戦場に送りません!」
ルーズベルトは堂々と言った、細長い顔を真剣なものにさせて。
「そのことを誓いましょう!」
「嘘だね」
エセックスはその彼を遠くから見ながら言い切った。
「それは」
「そうだろうね、今の状況を考える
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