第三章
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「だからですね」
「そう、気をつけるんだぞ」
「わかりました、それじゃあ」
「何かあったら相談してくれ」
社長はマヤリームに確かな声でこうも告げた。
「いいな」
「はい、何かあればですね」
「悪人にも悪霊にもな」
「妖怪にもですね」
「知っている限りのことはさせてもらう」
こうマヤリームに約束するのだった。
「それではな」
「はい、お願いします」
マヤリームは社長のその言葉に頷いた、そしてだった。
彼は目出度く結婚することになった、そのうえで新居でシャラーナと暮らすことになった。シャラーナは気立てがよくしかも優しかった、家事も見事だった。
料理も美味い、だが。
二人で食事を摂っている時にだ、彼は気になることがありいつも自分の向かい側に座る妻に問うのだった。
「食べないのかい?」
「実は私少食なの」
こう微笑んで答えるばかりの妻だった。
「それでね」
「それだけでいいのか」
「そうなの」
量はマヤリームが朝に食べる分の半分、いや三分の一程だ。パンにして食パン一枚もない。それは昼も夜もだ。
あまりにも少食だからだ、マヤリームは気になって言うのだった。
「身体がもたないんじゃ」
「大丈夫、これでね」
「もつんだ」
「私はそうなの。だから安心してね」
「だといいけれど」
彼はとりあえずはこう応えた、だが。
あまりにも少食でありだからといって妻はやつれたりしていない、それどころか肉付きはいい方だ。素晴らしい身体をしている。
しかもこっそりと食べている気配もない、家の食べものは普通に食べた分だけ減っていて食費も変わっていない。
それでだ、彼は社長にこのことを相談したのだった。他ならぬ社長が相談してくれと言ったのを受けてだ。
そのことを聞いてだ、社長は彼にまずはこう言った。
「まさかと思うが」
「まさか?」
「ああ、人間食べないと生きていられないな」
「はい、そうですよね」
「奥さんは朝だけじゃなく昼も夜もだな」
「食パン一枚も食べないです」
「それは幾ら何でもおかしい」
社長が聞いてもだった、そのことは。
「どう考えてもな」
「やはりそうですよね」
「外で食べていることも考えられるが」
「食費も変わっていません」
「それならだ、よくない予想だが」
どうかとだ、こう言った社長だった。
「奥さんにはお金持ちの愛人がいてだ」
「それで、ですか」
「そうだ、外でご馳走になっているとかな」
「ちょっとそれは」
新婚早々妻が不倫をしているとなっては誰も穏やかではいられない、それは当然ながらマヤリームもだ。
だからだ、彼はこう社長に言ったのだった。
「幾ら何でも」
「最悪の予想だよ、そんなことはあってはならない」
「そうですよね」
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