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兄弟星
第二章

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「一体」
「ちょっとな、隣村の奴から話を聞いたんだがな」
「隣村からか」
「網ってのがあってな」
「網?何だそれは」
「その網を作ってみようと思ってるんだよ」
 これがトカチの考えだった。
「それでその網をな」
「作ってか」
「魚を一気に何匹も捕まえようと思ってるんだよ」
「そんなことが出来るのか」
「まあ作ってみるさ」
 トカチは笑ってコンセンに言う。
「まずはな」
「全く、兄貴は」
 コンセンはトカチのその言葉を聞いて呆れて言った。
「いつもそんなことを言って」
「まあとりあえず作ってみるな」
「ちゃんと働いてくれよ」
「楽に働いて沢山のものを手に入れられれば最高だろ」
「それはそうだけれどな」
 それでもだ、生真面目な彼から見れば兄の気楽さと怠けはどうにも認められなかった。しかしトカチは実際に網を作って。
 それを川や海に入れる、するとだった。
 魚は実際に一度に何匹も捕まえられた、それはコンセンの釣りよりもむしろ上だった。コンセンはこのことに目を丸くさせて言った。
「何と、そんなに獲ったのか」
「ああ、どうだ?」
「凄いものだな」 
 小舟の上でだ、弟は兄の網の中にいる魚達を見て言うのだった。
「そこまで獲れたらな」
「うちも豊かになるな」
「ああ、魚が多ければ多いだけな」
「食うものには困らないしな」
「しかもな、魚を村の連中にやって」
 そしてだった。
「代わりに多くのものが手に入るな」
「ああ、じゃあな」
「これからもか」
「網を使ってな」
「魚を採るんだな」
「御前も使うか」
 網をだというのだ。
「そうするか」
「ああ、やってみる」
 こうしてだった、コンセンも網を使った。すると漁で採れる魚はこれまでの何倍にもなった。家は豊かになり母も随分と楽になった、だが。
 二人の母は高齢だ、それが為に。
 病に弱くこの時も重い病に罹って寝たきりになった。兄弟は今度はこのことに頭を痛めて話をするのだった。
 コンセンは腕を組み難しい顔で兄に言った。
「どうすればいいかだ」
「それはもう決まってるだろ」
 トカチはそのコンセンにだ、いつもとは違って深刻な顔で言葉を返した。
「薬だよ」
「薬を手に入れるか」
「ああ、それしかないだろ」
 こう弟に言うのだった。
「やっぱりな」
「薬か」
「そうだ、それでな」
 兄から弟に言う。
「長老から聞いたんだがな」
「長老か」
「ああ、あの人からな」
 二人が住んでいる村の長老だ、村の顔役であり長く生きているだけあって様々なことを知っている人である。
「聞いたんだよ、おっかあの病」
「それで何かわかったか?」
「あの病は治るらしい」
 まずはこのことから言うトカチだった。
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