第八章
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「心臓が止まってしまい。人は影も魂がある様でして」
「つまり影が喰われるということは」
「はい、魂を喰われるということです」
「だから誰もがですか」
「そうです、死んでいたのです」
影を喰われる、そのことによってだというのだ。
「そうなっていました」
「それがこの妖怪のしていたことですか」
自分が餌になっていて危うく魂を喰われるところだということを知り影喰らいを見た時よりもさらに蒼白な顔になって言う役人だった。
「恐ろしい奴ですね」
「はい、そしてこの妖怪は」
神父は神妙な顔でさらに話す。
「本来はフィリピンにはいません」
「そうなのですか」
「はい、いません」
「ではどの国から来た妖怪ですか?」
役人は影喰らいが元々はフィリピンにいない妖怪だと聞いてそのことも問うた。
「一体」
「スペインです」
神父が出した国はこの国だった。
「あの国の妖怪です」
「それが影喰らいですか」
「おそらく。フィリピンがスペインの植民地だった時に」
北西戦争までそうだった、スペインのフィリピン統治は長きに渡って続いたものだった。その間圧政も弾圧も餓死もあった。
「その頃に入って来たのでしょう」
「人間と共にですか」
「妖怪は人と共にあります」
このことも言う神父だった。
「人がいる場所に必ずいますので」
「だから植民地だったフィリピンにも入って来たのですか」
「そうでしょう」
「そうでしたか」
「それでなのですが」
神父は三人にさらに話す。
「これでこの妖怪は倒して事件は終わりですが」
「まだ何かありますか?」
エンリコが心配する顔で叔父に問うた。
「まさか復活する恐れがあるとか」
「それはないだろうけれど」
それでもだとだ、神父は自分の甥にも話すのだった。
「この泥の様になった骸の上に塩と松脂を撒こう」
退魔の効果があるそうしたものをだというのだ。
「そのうえで祓おう」
「念には念を入れてですね」
「そう、今からね」
言いながらだ、神父は袋を出した、そしてその袋から。
今言った塩と松脂を出してたっぷりと撒いた、それからだった。
祓いをした、そのうえで言うのだった。
「これでよし」
「やっとですね」
「そうです、では帰りましょう」
フェリペに答えそうしてだった。
三人はそれぞれの家に帰って休んだ、そしてその次の日に。
フェリペの事務所にエンリコと神父がいた、その彼のところに役人が来て札束を一つ出してからこう言った。
「はい、これがね」
「報酬の残りですね」
「そうだよ、仕事を果たしてくれたから」
だから出すというのだ。
「遠慮なく受け取ってくれ」
「それじゃあ」
本当に遠慮なくだった、フェリペは役人が差し出したその札束を
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