第四章
[8]前話 [2]次話
「速いです、鰐よりも」
「けれど鮫じゃないんですよね」
「鯨でも」
「違います」
それは間違いないという。しかも。
その得体の知れない生きものはこちらに向かってきていた、カンターロの船の方に。それで彼は言うのだった。
「まさか」
「?こっちに来てますね」
「船の方に」
客達もこのことに気付いた。
「鰐でもないですし」
「あれは一体何かな」
何時の間にかだ、客達も砕けた口調ではなくなっていた。敬語になっていたのは切迫したものを感じてカンターロに丁寧に言いたいからであろうか。
「あの、船長さん」
「はい」
船長と言われてだ、カンターロも答える。
「あれが何かですよね」
「どうします?」
「とりあえずここは」
すぐにだ、青年に顔を向けて言う。
「速度を上げてくれ」
「はい、わかりました」
青年も応えて速度を上げる。だが。
ここでだ、その得体の知れない生きもの速度を速めてきた。それは鮫や鯨と比べても相当なものであった。
それで船にさらに近付いてきた、そしてその姿を見ると。
「!?あれは!」
「恐竜!?」
「まさか!」
「あれは!」
「いや、そんな馬鹿な」
カンターロもそれを見た、それは明らかにだった。
鰐を思わせる頭の下の首は短い、身体は鰐に似ている。尾は長い。
だが足が違った、足は四本の鰭だ。しかも大きさが。
「この船よりも大きいですよ」
「それもかなり」
客達がカンターロに言う。
「二十メートルはありますよ」
「頭も相当大きいです」
その大きさは人なぞ丸呑みに出来る程だ、しかも。
牙は禍々しいまでに大きく鋭い、その牙も見せて向かって来る。それでだった。
カンターロも血相を変えた、それで。
操縦席に行ってだ、青年に言った。
「おい、全速力だ」
「カンターろさんはどうしますか?」
「銃あったよな」
危機を察してだ、それの場所を問うたのだ。
「ショットガンか何かな」
「銛もありますよ」
「いや、銛じゃ駄目だ」
それならとだ、カンターロは咄嗟に返した。
「あれじゃあとてもな」
「ええと、あれって」
青年もここで後ろを見た。全速を出しながら。
「恐竜ですよね」
「ああ、モササウルスか?」
「あれクロノサウルスじゃないんですか?」
「何だそいつは」
「海にいた恐竜の中で一番大きかった奴ですよ」
「それがクロノサウルスか」
「はい、一番強かったんですよ」
海に棲んでいた恐竜の中でというのだ。
[8]前話 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ