第三章
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「釣りをはじめますか」
「ここでか」
「いよいよよね」
「カジキ釣りましょう、何でしたら鮫も」
そうした大物の魚だというのだ。
「そうしましょう」
「よし、それじゃあ」
「今から」
観光客達はカンターロの言葉に笑顔で応えてだ、そのうえでだった。
それぞれの釣竿で釣りをはじめた、忽ち魚達が釣られていった。しかしカジキや鮫といった大物は連れなかった。
だがその魚達を見てだ、カンターロは観光客達に笑顔で言った。
「陸に戻ったらこいつ等を」
「食うんだよな」
「そうするのよね」
「はい、バーベキューです」
それにしてというのだ。
「そうしますから」
「そっちも楽しみだな」
「そうよね」
「酒も用意してますよ」
これは別料金である、カンターロもしっかりしている。
「白ワインにカクテルを」
「おお、そっちもか」
「あるのね」
「ジュースもありますから」
勿論金は貰うがだ、ついでに言えばチップも貰う。マイアミもアメリカでありカンターロも資本主義社会にいるのだ。
それで何気に金になる話もしてだ、それでだった。
カンターロはいい時間になったところで波止場に戻った、だが引き返した時だった。
その中でだ、観光客の一人がカンターロにユーターンしたところで後ろを指差してこう言った。丁度彼は運転中だった。
「あの、お兄さん」
「どうかしたんですか?」
「何か後ろに見えるけれど」
「後ろに?」
「ああ、あれ何だろうな」
こう言うのだった、そう聞いてだった。
カンターロは助手役の一つ下の若者にだ、こう言った。
「ちょっと操船頼めるか?」
「あっ、はい」
若者も応えた、そしてだった。
彼が操船を担当した、そのうえで。
カンターロは船の後部に来た、するとそこには。
海の間に何かがいた、だがそれは波と波の間でよく見えない。しかし。
それをじっと見てだ、カンターロは言った。
「鯨?いや」
「違いますか?」
「違うみたいですね」
こう客に答える。
「あれは」
「じゃあ鮫ですか?」
「鮫でもないですよ」
やけに小さな頭だ、その形は何に似ているかというと。
「鰐ですかね」
「そういえば鰐は海にも出るんですよね」
「ええ、種類によっては」
イリエワニ等だ、アメリカにいるアメリカワニも入江にいたりする。だから海に鰐がいても何ら不思議ではないのだ。
しかしだ、カンターロは鰐を何度も見ている。それも野生の鰐もだ。それで直感的にあれは鰐ではないと察した。
それでだ、客達にもこう言った。
「いえ、あれは」
「鰐ですよね」
「そうですよね」
「何か違いますよ」
「じゃああれ何ですか?」
「鰐じゃないって」
「しかも」
さらに言う、その鰐の様な生き
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