第八章
[8]前話
だからだ、ビッグはこうカーペンターに言うのだった。
「それならな、飲むのならな」
「ここでだな」
「何を飲みたい」
「というか酒何持ってるんだよ」
「バーボンならある」
ビッグが出したのはこの酒だった。
「これでいいか」
「そうか、バーボンか」
「飲んでいないだろ、イラクだと」
「いやいや、酒も補給してもらってたぜ」
カーペンターは笑ってそこは大丈夫だったと話した。
「ちゃんとな」
「それでバーボンもか」
「飲んでたけれどな、安いものばかりでな」
「俺が持っているのはあれだ」
ここでビッグは自分が持っているバーボンのメーカーを話した、するとカーペンターはその顔を明るくさせて言った。
「いいな、それか」
「どうだ」
「言ったろ、最近バーボンは安いのしか飲んでなかったんだ」
「イラクではか」
「イラクどころかな」
「それより前からか」
「何かな、士官学校出てからバーボンわかる奴が周りにいなくてな」
それでだとだ、笑って言うカーペンターだった。
「今もな」
「それでか」
「ああ、そのバーボンは飲んでなかったよ」
「そうか、なら飲むな」
「楽しみにしてるぜ」
「わかった。それで空の方はどうだ」
パイロットとしてはどうかとだ、ビッグは彼にこのことをここで問うた。
「そちらは」
「今も乗ってるぜ」
つまりパイロットのままだというのだ。
「ラプターにな」
「それは何よりだな」
「ただな、今試験機のパイロットの話が出ててな」
「ラプターからか」
「トップガンになれないかもな」
目指していたそれにはというのだ。
「まだ決まってないけれどな」
「そうか、まあそうなってもな」
「やってくさ、あと結婚もしてな」
「そうだな、俺もな」
「相手いるか?そうした話もな」
「バーボンを飲む時にするか」
この後で二人になった時にだというのだ、つまり今の様な公のパーティーの場ではなくプライベートの場でだというのだ。
「そうした話はな」
「そうだな、結婚もしないとな」
「そろそろな」
見れば彼等はもういい年齢だ、士官学校を卒業してから暫く経つ。それでそうした話もしたのである。そして。
二人はあの時の約束通り美味い酒を飲んだ、離れ離れになりそれぞれの職種配属先になっても彼等は同期だった。あの時のまま。
懐かしき友 完
2014・1・31
[8]前話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ