偽りの大徳
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の敵だというのなら容赦しない」
大きく、殺気と怒気を叩きつけて言い放つと、劉備も関羽も苦い表情に変わった。
今回、犠牲を伴わずに軍としての姿を保ったままで抜けられるのだから、選べないのはどういうことか二人も理解している。
次に生かす機会を貰ってさえ、自国の民たる兵さえ生かせないのならば王として落第。これ以上のわがままを言うのなら、そこまでの人物だったということ。
――さあ、答えを聞かせて貰いましょうか。
†
桃香様も、愛紗さんも分かっているはず。
提示された選択肢を選ぶ事が出来ればまだ機会がある。曹操さんを抑え込み、漢の再興を測る機会が得られるのだ。
皆が無事に生き残る為に、私は桃香様に一つの事を言っていた。
『何があろうと、桃香様の理想を作り出す事を考えてください』と。曹操軍が此処にくればどのような利害があるかを説明した上で。
桃香様ならきっと曹操さんに対して語りかけると思っていた。そして……曹操さんならばそれを提示してくると確信していた。
徐公明と公孫賛の身柄譲渡。政治的に見てあの二人は影響力が大きいから必要不可欠。
もしかしたら、秋斗さんだけを求めてくるかとも思っていたけど、この場に辿り着いていないから白蓮さんを最後まで対価として提示したのだろう。
不安の渦が心を支配する。
彼が交渉の場に間に合わないように、休息の為の兵を中途地点に少し送ってもいる。命令ならば聞く人だから彼は少し休んでから此処に来る……はずだった。
しかし白蓮さんから幽州の戦の話を聞いて、その必要すらなかったのだと絶望した。
袁紹軍の街道封鎖は迅速にして的確であり、追撃のしつこさも異常。だから戦闘が行われるのは必至だったんだ。それでも、徐晃隊七千なら抜けられる。最低でも秋斗さんと雛里ちゃんだけは此処に辿り着けるだろう。
不安が大きくなっていく。
もしかしたら、捕まっているかもしれない。
もしかしたら、殺されているかもしれない。
ただ、嬉しくもあった。
私の策で皆が無事に徐州を抜けられる。秋斗さん達が無事に辿り着いたなら、曹操さんに誰かを取られる事も無い。
きっと、秋斗さんなら分かってくれる。劉備軍が力を持ったまま、桃香様の理想を叶える為にここを抜ける選択を是としてくれる。あの人が交渉の席にいたならば、確実に自身の身を差し出しただろう。彼と雛里ちゃんは曹操さんへ払う対価の上乗せをも考えているはずだから。
――でも……どうして曹操さんはあんなに楽しそうに私を見るの?
彼女の瞳は歓喜の色。既に桃香様から視線を外し、私だけを見据えている。その表情は、勝ちを確信した人が見せるモノだ。
隣で桃香様が顔を上げる。その口から、悲痛な声音ながらも決断が下された。
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