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乱世の確率事象改変
偽りの大徳
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「お腹が空いてしまう程の時間を使わせられたのだから仕方ないわね。桂花も食べて構わないわよ。せっかく出して貰ったモノを食べないというのも悪い。ふふ、食べ終わるまでに劉備から何か言ってこないのなら、この交渉を終わらせてあげる」

 言うや季衣は机の上のお菓子に手を伸ばす。
 ふと、一つの引っかかりを覚えて諸葛亮を見やると、悲しみに瞳の色を落としていた。切なげに、今ここには居ない誰かを求めるように。

「諸葛亮、この甘味は徐晃が作り方を教えたモノね?」
「は、はひっ! しょ……コホン、その通りです。どら焼きといいます」
「へぇ……小型のほっとけぇきに餡を挟む、か」
「味も薄く、生地の膨らみも足りないようですが……店長の店ならば改善されるでしょう」

 既にもくもくと食べ始めて、顔を輝かせている桂花と季衣。稟と私はマジマジと見ながらゆっくりと食べ進めていった。
 それでも、劉備は沈黙を貫いていた。劉備軍のような緩い雰囲気にしてあげても、結局彼女は現実を選べなかった。
 お茶を飲んで一息。もはや結果は決まった。
 諸葛亮の目的は私にこれを提案させる事。そして劉備にこれを選ばせる事。そうでなければ先程あのような瞳をするはずがない。
 きっと諸葛亮も鳳統と同じように徐晃を慕っている。そして将としての有用性も、あの男自身の在り方にも気付いていて、私の元に少しでもやれば取られると考えているのだろう。

――さて、王としてこれを選べないのなら劉備に未来は無い。そうなると、少しの風評低下は我慢しなければならない、か。せめて私に立ち向かう王であれ、劉玄徳。

 心を決めて、コトリと机の上に湯飲みを置いた。
 後に、私を見据え続ける劉備を……殺気を込めて睨みつけた。ビクリと震えあがった劉備の身体、それでも私を見つめ続けていた。

「劉備。これだけ時間をやっても決められないとはなんたる様か。しかし民の平和を願うあなたを見捨てるのだけは……黄巾時代のよしみでしないでおく。
 対価だけ変えてあげる。徐公明も公孫賛もいらないわ。私の領地の通行を許可する」
「か、華琳様!?」

 春蘭がすっとんきょうな声を上げたと同時に、驚愕に目を見開いた関羽と劉備は直ぐに昏い表情に変わる。何も解決していない、というように。

「ただし! あなた達がこの先……益州と荊州を平定したのなら、私はその地を奪いに行くわ。あなたの嫌う力を使って、話し合いの場も持たずに侵略してあげる。それを以って対価と認めてあげるわ。あの二人は益州と荊州二つの土地でさえ釣り合うのだから」
「でも――」
「私の国の兵は私のモノ。お前が口を挟む事では無い。劉備、これさえ選べないというのなら、此処で劉備軍を見捨てても、潰してもいいのよ? あなた達の命運を握っているのは私。逆らうなら、私
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