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打球は快音響かせて
高校2年
第二十三話 転換
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ッチラ、松葉杖で歩くことにした。

「あ、葵さんやなかですか!」
「あ、知花くん」

葵と2人で歩いている時、ユニフォーム姿の集団がゾロゾロと並んで走ってきた。上半身はノースリーブのアンダーシャツだけで、顔は真っ黒に日焼けしている。丸い顔、濃い眉毛、いかにも島人らしい顔立ちをしている少年達だった。その少年達が葵を見つけると、立ち止まって挨拶する。

「おお!葵さん、これが噂の彼氏ですか!?」
「水面で野球しよるっていう!」
「大怪我しよるやなかですか!」
「水面の野球は、こんな怪我するまで練習するんやなぁ…」

みるみるうちに高校球児の集団に取り囲まれ、翼は恐縮するほかない。目の前の球児たちはニコニコしていて、悪気は全然なさそうだが、しかし坊主頭の男に囲まれるのは、むさ苦しくて落ち着かない。

「こらぁーー!何足ィ止めよるんやー!」

その集団を追いかけて、チリンチリンとベルを鳴らしながら老人が自転車に乗って走ってきた。
結構な年である。白髪と白い髭をたくわえており、高地監督と違って大らかそうな顔つきをしている。

「ハイ!監督!葵さんが居りましたんで!」
「お前らぁ、本当に女ァ好きやのぉ!ナンパすんのはええけさっさと走れぃ!」
「「「ウッス!」」」

監督に一喝された球児たちは、翼と葵から離れ、もう一度走り始める。葵が笑顔で手を振ると、球児たちも手を振っていた。ちゃっかり、監督も葵にウインクをかましていたのを見逃してはならない。

「……あれ、葵の高校の野球部?」

島人らしい、何とも大らかな雰囲気の彼らに圧倒されながら翼が尋ねる。葵は首を横に振った。

「ううん。南海学園の野球部よ。」
「あー、あそこかー。」

斧頃島に高校は三つしかないので、翼も名前を聞けば分かった。葵の通う普通科の斧頃高校と、漁師を育てる斧頃水産、そして今名前が出た私立・南海学園。3年前に出来た学校で、島の中央の山の中にこじんまりとした校舎を構えた全寮制の学校だ。全寮制という事もあり、通える距離に家がある地元中学生からの人気はそれほど高くない。が、島外からの入学者にとっては結構人気らしい。斧頃の豊かな自然の中での教育を売りにしているのだ。

「で、何で南学の野球部と知り合いなの?何故か俺の事も知ってたし」
「バイト先のジムにね、あいつらよう来るんよ。あたしこれでも結構モテるんよ〜3回くらい告られたしね〜」

日焼けした顔に得意げな、満面の笑みを浮かべる葵。だが、翼がビックリしたのはそこではない。

「え?葵ジムでバイトしてるの?」
「あれ?言ってなかったっけ?この春から働きよるんよ〜。体も鍛えられるし、一石二鳥やけん。これ、ちょっと見てや」

葵は自分のワンピースの裾を右足の太ももの付け根まで一気にめ
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