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打球は快音響かせて
高校2年
第二十三話 転換
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なくなってしまった。自分達の番が来てしまった。

「なぁ、宮園」
「何ですか?」
「やっぱアレ、アウトいっこ、とるべきやったよな」

宮園には、林が今日の試合の8回のファーストゴロの事を言ってるとすぐに分かった。間に合わないホームに送球せず、一塁ベースを踏んで同点の二死二、三塁を作っていたら、一体どうなっていたか。

「……いや、俺らが勝つには、やっぱり初回の5点を守るしか無かったですよ。あそこで同点のままだったとして、多分、いつか打たれてました。それは鷹合の球を受けてた俺なら分かります。」

それは宮園の本心だった。同点になった段階で、どのみち勝負はついたようなもの。鷹合に慣れ切った海洋打線はその先抑えようが無かっただろうし、こちらは海洋の城ヶ島を打てなかっただろう。

「……お前がそう言うなら、そうやろな」

ふと林が下を向いた。
宮園に自分の顔が見えないようにした。

「でも結局、決勝点は俺のエラーやけ」

林は顔を上げようとしない。

「その事実は絶対に消えん。あれさえなけりゃって、ずっと思うんやろな。」

しゃくりあげる音が聞こえてくる。
林は今日、何度こういう風にして泣いたのだろうか。

(……毎年毎年、変わりばえのしねぇ三龍の夏)

宮園は眼前の先輩の様子を見て、恐ろしくなった。

(俺も来年、こういう風にして泣くのか?)

嫌だ。宮園は思った。
しかし、一方で、恐らく、これは運命なのだと。
いくら嫌だと思おうが、多分これは来年の自分の姿なのだと。そう思う自分も居た。



ーーーーーーーーーーーーーー




「ただいま。」
「翼…………」

翼は例によって、代替わりのタイミングで帰省した。たった1日しかないお盆休みには帰省できない以上、夏はこのタイミングで帰省するしかない。連絡船から、松葉杖をついて降りてきた翼に葵が駆け寄る。

「お帰り。足折ったんやね」
「うん、打球当たってさ」
「荷物持ったげる。渡して」

葵は翼の制止を抑えて、持っていたバッグをひったくった。たすきがけしたバッグの肩掛けが葵の胸に谷間を作り、翼がそこに一瞬目を奪われたのは内緒である。

「大丈夫?ちゃんと歩ける?肩貸してあげよか?」
「いや、大丈夫だよ」

断りつつも内心、翼はそれも悪くないかもな、と思っていた。夏はいけない。薄着の葵は、日焼けした肌が健康的で、体が太すぎず細すぎず、それでいてキュッと引き締まり、やたらと扇情的だ。前に会った時よりずっと女らしくなったような気がした。それも無理はない。成長期なのだから。

しかしあんまりベタベタくっつくのも恥ずかしいし、何より高校球児が女の子に肩を貸されているなんて、どうにも情けない。
結局、エッチラオ
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