#4『ファーストリべリオン』:2
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異国』の特殊な武器を扱うことを専門とするのが、チャイネイの友人でもある紅日人、ヤマト・ユウヒグレ率いる第八師団である…動物との意思疎通を可能とするコーリングの部隊として再編成されたとき、このような構成となったのだ。チャイネイが団長になったのも、もとはと言えば体術の素質だけでなくビーストテイマーの素質があったことが大きい。今の第九師団では、特殊体術を専門とする団員は以前ほど多くを占めていない。それでも、多いことに代わりはないのだが――――。
「チャイネイ様、遅いです!」
チャイネイが団員のたまり場となっているミーティングルームのドアを開けると、一番にトーンの高い声が響いた。声を発したのは一人の少女だ。ミディアムカットにされた茶色い髪を二つ結びにし、鈴の様にも見える形状の髪留めでとめている。赤いチャイナドレスは第九師団の女性団員である証だが、その意匠は他の女性団員…もっとも、現在は彼女以外の女性団員はいないので、過去の、という言い方になるが…のものとは少し異なる。
彼女の名はエィ・イーリン。多少上位ランク《箱舟》の血が混じっているチャイネイと違い、彼女は生粋の『異国』即ち《真》人である。そのため、彼女の名前は実に珍しい、名字が先に来て、後にファーストネームが来るという形を取っている。
彼女は、第九師団副団長全権委任代理。本来ならば、第九師団の副団長はチャイネイの親友であり、チャイネイの師匠の孫息子であり、そしてイーリンの兄である男、エィ・ファンロンが務めているはずであった。しかし彼は二年前、「武者修行に出る」という謎の置手紙を残して失踪し、以後、彼の姿を見た者は居無い。なお、彼は一切の食糧及び着替え等を持って行かなかったので、生きているのか、日々の生活ができているのか危ういのが現状であると思われる。
さて、イーリンはよくわからない夢想に取りつかれた兄の代わりに、第九師団の副団長をこなさなければならない、という強い使命感のたまものなのか、チャイネイのとる行動一つ一つを注意深く観察している。今日だってコーリングを迎えに行くので多少遅れることなど皆知っているだろうに、このように喚く。
「怒らないで、イーリン姉ちゃん。チャイネイは僕のこと迎えに来ただけだよ」
「で、ですが……チャイネイ様は第九師団の団長です。もしチャイネイ様に何かあったら、我々は崩壊してしまいます。それに……」
その先は小さくてよく聞こえなかったが、イーリンの顔が真っ赤になっているのはなんとなくわかる。なぜだ?と思いつつも、チャイネイは「そうか、すまなかった」と彼女に声を掛ける。
「では次から、コーリング様の送迎には俺以外にももう1人つけることにしよう。イーリン、来てくれるか?」
「え!?あ、は、はいっ!」
イーリンの表情が、
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