#4『ファーストリべリオン』:2
[2/6]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
その状況が大きく変わったのは、先代第九師団長が退位、同時に運悪く副師団長が急遺し、チャイネイが団長に、その師の孫息子が副団長に就任した時だった。必然的に他の団長団や上層部の人間とも会話をしなければいけなくなったチャイネイにとって、「共通語が使えない」と言うのは相当に厄介なことだった。指示が分からず、戸惑うことも多かった。
そんなチャイネイを救ったのは、今や自らの主となった一人の少年だった。
「チャイネイ?どうしたの?」
「いえ。何でもございません、コーリング様」
チャイネイは、頭上から笑顔を見せる少年に笑いかけ返し、彼を肩車する体制を整えなおした。
《教会》の司祭階級では、《教皇補佐官》を除けば最高である上位組織、《七星司祭》。その第六席に座する少年、コーリング・ジェジル。
当時、空いたばかりだった第六席に、その素養を見込まれて座ったコーリングは、わずか三歳。甘えたい盛りの年ごろに、誰も知っている人間がいないというのはきっとつらかっただろう。事実、彼は最初の頃、今の様にニコニコ笑ってはいなかった。会議の途中に泣き出してしまう事さえあったのだ。
孤独なコーリングと、孤独なチャイネイが引きあうのも時間の問題であった。さらにコーリングには、あつらえたかのように特殊な能力があったのだ。
それは、生きとし生けるあらゆる生物と会話する能力。彼の持つ《刻印》、《猫》は、”神の作りたもうたあらゆる生物”、即ち果てはクジラから果てはチーズに沸いた蛆まで、全ての生き物と会話ができる刻印能力を持つのである。当時は小動物や、頑張っても人間が限界だった。現在では大型動物との自由な意思疎通が可能となっているが、当時はまだ人間と話せるようになったばかりだった。それでも、彼の存在は、共通語を知らないチャイネイにとって、色々な意味で重要なものになった。
チャイネイは共通語を学び、”騎士”の精神を手に入れた。コーリングは頼れる人を見つけ、笑顔を取り戻した。それが、今の二人に強い絆を生み出している。
キュレイ・マルークには第五師団が、セルニック・ニレードには第六師団が、フェラール・ゾレイには第八師団が付いているように、《七星司祭》にはそれぞれ直属の《十字騎士団》の師団が付いているが、コーリングと第九師団の絆は、他のどのものよりも強いとチャイネイは信じている。
さて、今コーリングを肩車しつつ、チャイネイが向かっているのは《知識》の《教会》支部の施設八割を占める第九師団の駐留所、その本部である。第九師団は《獣使い》と呼ばれる素養をもった人間が多い。もともとは『異国』に伝わる特殊な体術を使用することを目的とした部隊だったのだが…なお、『
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ