第十八話 葛藤
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じ小隊って話だったな?」
その一言・・・その一言で、お父さんは姿を変えたように見えた。すぐに答えれず、お母さんの方に視線を変える。お母さんは、とても驚いたような顔をしていた。・・・無理なの、イナリの事を隠すの。もう、話しちゃったの。
「う、うん。それが、どうかしたの?」
「ハナに、やって欲しい事があるんだよ。来週末、ある所に彼を連れてきて欲しい。出来るよな?」
そう話すお父さんの目は、今まで見たことがない目だった。焦点が合わず、空洞のような目をしている、そんな風に見えた。それぐらいに、お父さんが怖かった。
「あ、でも・・・」
答えられない。答えられる筈がない。私が、なかなか答えずにいると、お父さんは、急に私の両肩を掴んだ。それも、とても強い力で。私は、その肩を掴む痛さと、お父さんの異常な行動に、ただ、怯えた。
「ただ連れてくるだけだ!何もしやしないさ!」
「お父さん!やめて!ハナを離して!」
お父さんの怒声と行動に、お母さんがそう、叫んだ。そして、叫んだと同時に、お父さんの腕を掴んで離そうとしてくれた。でも、力でお父さんに叶う訳はなかった。お父さんは、離そうとするお母さんを、殴り飛ばした。鈍い、重い音を立てて。
「あ、お母さん!・・・お母さん!お母さん!」
私は叫ぶ。殴られて、1,2mは飛んで倒れ込んだお母さんに。お母さんは、その声が聞こえてか、少しずつ体を起こした。よかった、無事みたい。しかし、顔を上げたお母さんの顔は、血だらけだった。殴られた所が赤く腫れ、鼻血が流れて出ている。
「うるさいんだよ・・・お前たちは。これは、菜野一族の為なんだ。菜野一族の再興の為のな!」
そう言って、お父さんは、また両肩を掴む力を強めた。
「痛っ!痛いよ、お父さん!」
私は、泣いていた。目から頬を伝う涙は、止まらない。
「ハナ!菜野一族が再び栄光を掴むには、しなければいけないんだ!分かるだろう!?」
両肩を掴む力は、さらに強くなる。
「・・・わ、分かんないよ!分かんない!一族の再興なんて・・だって、イナリは、大切な友達なの、仲間なの!!」
涙で、お父さんの顔を見る事は出来ない。でも、ただ叫んだ。自分の気持ちを。その時、両肩を掴む力が緩んだ。“よかった!お父さん、分かってくれた!”そう思った。でも、違うかった。その瞬間に、頬にとてつもない痛みを感じた。その痛みと同時に強い衝撃もあって、私はそれに体を持っていかれた。ジンジンとする痛みのなか、意識を失った。
次に気が付いた時は、冷たい床に寝ていた。とても冷たくて、そして、私の血なのか、お母さんの血なのか、点々と赤い液体がこぼれていた。その床は、いつも楽しそうに話すお父さん、お母さん、私が暮らす家の床だった。こんなに、冷たいなんて思ったことない。いつも
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