第十八話 葛藤
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ように言うのは、カタナだ。彼は意外にも、遅刻したことは一度もない。カタナの言葉に、皆が笑う。しかし、私は、ぎこちない笑い方しか出来なかった。そんな時、イナリがこちらに顔を向けた。私を見て、どこか安心したように顔を綻ばせる。
「あぁ、よかった。ハナ、昨日の夜は何もなかった?」
心臓が跳ね上がった。想像だにしない言葉が降りかかってきたからだ。
「よ、夜って?」
私は、きっと可笑しな顔をしていたと思う。それぐらいに、動揺していた。
「あ、いや・・・ごめん、変な事聞いたね。」
「ううん、別に。な、何もなかったよ。」
二人して、何処かぎこちない。イナリは、昨日の夜、何かを感じたのだろうか。ふしみ一族の能力・・・“敵意”や“悪意”を感知するレーダー。この前の任務でも、その能力で危機を逃れた。まさかとは思うけど、バレてないよね・・・?
「何してんだ・・・二人して?」
カタナが不思議そうにそう、声を掛けた。それをタイミングに、イナリから離れる事ができた。
「ほら、隊長が向こうで話するって。」
少し離れた所にあるベンチを指差している。私は、そそくさと返事をして、そちらに向かった。それに続いて、イナリとカタナもベンチに向かう。私は、あえてイナリの横を避けた。隣に座ることなんて、出来なかった。全員がベンチに座るのを確認してから、トバリ隊長が話し出した。
「とりあえず、任務まで時間もあるし、今度の大きな任務について、話をしておこうか。今度はとても大規模な作戦になる。動員は、攻撃部隊20個小隊。支援部隊8個小隊。そのなかで、私達は〈後方支援科 通常補給群〉として参加します。」
その言葉は、少しばかりの緊張を含んでいる。
「目的は何になるんですか?」
イナリが、問い掛ける。
「目的は、敵の戦力を削ぐ事。敵の進軍ルートである三枝木鍼の橋を破壊。そして、暗殺部隊もそれを囮に動く。つまり、合同作戦だね。」
“囮”・・・それに少しだけ反応してしまう。皆も同じなのか、視線を落とし、何も言わない。それを気にしてか、トバリ隊長は何もなかったかのように続ける。
「それで、私達の仕事は司令部への補給だ。」
「司令部?」
私は、つい質問してしまった。隊長は、私に顔を向けて答える。
「そう、今回は大きな部隊が動くからね。司令を出す大隊長が任命される。それで、配置的には、実際に敵と接敵する前線、その後方に指揮する大隊長がいる司令部、そして最後方に補給部隊が設定されるんだ。補給物資等は、最後方の所から司令部までと、司令部から前線へと2つ補給線が出来る。その2つを4個小隊ずつで担当する。で、私達は、後ろの担当と、言うことだよ。」
「あ、なるほど。」
「詳しくは、巻物に書いてあります。よく読んで、後は処分しといてね
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