第十八話 葛藤
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第十八話 葛藤
火の国暦60年8月20日 夜
火の国 木ノ葉隠れの里 稲荷神社
ふしみイナリ
「ぶはぁっ!!」
そんな情けない声で飛び起きた。愛着のある寝間着の下には、何とも言えない気持ちの悪い汗をかいている。8月も終わりに近づいてはいるが、まだ、寝苦しい暑さが襲うことが多い。しかし、これは、その類いではなかった。どちらかと言えば、背筋を凍らせるような、不気味の悪いものだ。
「はぁ、はぁ・・・な、何だ?」
呼吸は荒く、まるで、ギリギリまで息を止めていたかのように、酸素を欲していた。それに加え、喉の異様な渇きに気付く。僕は、水を求めて立ち上がり、台所まで急いだ。だが、足元が少しばかり不安定で覚束ない。それでも、やっとの思いで台所にたどり着き、水を一気に飲み干した。冷たい水が体内を駆け巡り、その心地よさに少しだけ安心する。
「はぁ、どういう事だろう?」
原因は分からない。しかし、起きた事は意外にも、明確だった。ふしみ一族の能力が働いたのだ。木ノ葉隠れの里の北西、ここからもそんなに遠くはない森の中に強い“悪意”、“敵意”を感じたのだ。それはとても強く、そして、どす黒く濁ったものだった。
ふしみ一族の、この能力・・・まだ、自分自身の意志で使う事は出来ない。前の任務でもそうだったが、こいつは勝手に反応する。その範囲や、その正確性も分からない。ただ、自分に対して強く感じるものは、特に反応するようだった。
それはさておいても、今、感じた方向は確か、菜野一族が管理する森の方角だ。ハナに何かあったかもしれない・・・そんな事が頭をよぎる。すぐにでも着替えて、そこに向かおうとした時だ。また、先程と同じような感覚が体を襲った。それは、ただ感じると言うものではない。耐えられないほどの頭痛が襲い、立っていられなくなり、その場に倒れてしまった。
「な、何だ・・・これっー!」
特に抵抗する間もなく、僕は、そのまま意識を手放した。
その5時間後
木ノ葉隠れの里 とある公園
菜野ハナ
午前8時、夏真っ盛りの日でも、この時間はまだ、その風は心地よいと言える。ただ、喧しく鳴くセミの声だけはどうにもならなかった。
今日は、今度の任務についての話し合いと、小さな任務をこなす事になっている。集合時間は午前8時、この日は珍しく遅刻したのは、イナリだった。しばらくして、彼は、その顔を蒼白にして現れた。
「イナリ君、大丈夫かい?顔色が悪いけど?」
そんな彼に第一声を掛けたのは、珍しく遅刻しなかったトバリ隊長だった。彼は、それに笑顔で答える。
「だ、大丈夫です、トバリ隊長。すみません、遅れてしまって。」
「いや、いいんだけど・・・」
「まぁ、隊長は何も言えないよなー。」
そう、茶化す
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