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【IS】何もかも間違ってるかもしれないインフィニット・ストラトス
闖入劇場
第七九幕 「あの碧い空へ」
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PIC補助パーツがごっそり無くなっていたからだ。
それを補ったのが風花の“翼”―――「桃花扇(とうかせん)」である。この翼の驚くべき所は、今だ現行ISの中では白式改にしか使用されていない「展開装甲」の技術を限定的ながら独自開発で搭載していることにある。「展開装甲」の細かい説明は今回は省かせてもらうが―――この技術によって、風花は今まで持っていた利点を一切潰さずに空中戦が出来る域へと昇華された。

風花は今日この日より、天翔(あまかけ)る翼を得たのだ。
その上で、ユウは壁から立ち上がったドゥエンデを態と上から見下ろす。それは今まで自身が散々やられた行為への意趣返し。イニシアチブの奪取。そして、ユウにとっての答え合わせ。

「―――キミのそのISさ。いや、ISなのかどうかも知らないんだけど・・・“PIC、搭載してない”でしょ」
《――――――》

相も変わらずドゥエンデは何一つリアクションを起こさない。だが、ユウは既に確信に近い域へ至っていた。度重なる不自然な動きがパイロットではなくシステム的なものであることに思い至ってしまえば、応えは自ずと絞られる。

「PICありきならもう少し上手に躱せるし、一々空飛ぶのにスラスター噴かす必要もない。それにあの不自然な動きはPICで再現するのは無理だろう。多分君の“それ”に搭載されているのは指向性の引力だか重力だか、そういったものを発生させる装置なんじゃないのかな?」

例えば殴られそうになった際に、自分の身体が背後に引っ張られるように引力を発生させればノーモーションから突然回避することができる。
例えば相手を殴る時、自分の腕を指向性の引力で敵の方へ強引に引っ張れば、体勢に関係なくその引力分の衝撃を相手に与えることができる。
例えばこのシステムを使って緊急回避した場合、PICならできて当然の加速減退を行えないから、結果として足かスラスターでその動きを止めなければならなくなる。
全てがおかしく感じた理由はそれだ。機動がISのものではなかったのだ。

「さあ、答えてもらうよ。僕を襲った理由、その“ISのような何か”のこと、全部ね・・・」

風花の背中のスラスターから漏れる光が少しずつその濃密さを増していく。



―――これ以上の情報収集任務はアニマスの無用な情報漏洩を起こす可能性あり。アニマス16、強襲任務の優先順位を変更し、“同業者”との情報交換の後戦闘空域を離脱します。アニマス28は所定の指示あるまで現任務を続行されたし―――



瞬間、ドゥエンデは直立の体勢のまま噴射加速を超えるほどの速度で上昇を始めた。同時にジャミングと電磁迷彩を最大稼働。これでISにも監視衛星類にも姿を目撃されず、尚且つ自身よりも最高速度が上な風花からも逃げられる―――筈であった。



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