第三章
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「今以上に」
「そうなるのかしら」
「ええ、なりますよ」
マスターは笑顔の中に確信を以て言い切ってきた。。
「私の腕も上がっていますが、二年後はさらに」
「それに加えてなのね」
「人は成長するとそれだけお酒も美味しく感じるものですよ」
「初耳ね、そんな言葉があるのね」
「はい、お酒を飲めない人は他の飲み物が」
そうなるというのだ。
「ですからお酒を飲める人は」
「人として大きくなれば」
「余計に美味しくなります」
「じゃあそのことを確かめさせてもらうわ」
私はカシスオレンジを飲み終えてからマスターに話した。
「カシスオレンジと。いつものマティーニはね」
「二年後ですか」
「ええ、彼が戻って来た時にね」
その時にだと話してだった、そして。
カシスオレンジもマティーニも止めた、ジントニックやスクリュードライバーを飲んでいた、そうして彼が帰って来るのを待った。
その二年後、遂に。
彼が戻って来た、けれど私はその連絡を受けても空港にまで迎えには行かなかった。
この日もあのバーにいた、そしてだった。
カウンターに座っていた、マスターはその私に行ってくれた。
「右隣の席はです」
「ええ、有り難う」
「開けていますので」
私、いや彼に気を遣ってくれてそうしてくれている、私はこの好意に感謝の意を込めてお礼を言ったのだ。
そしてだ、その話を受けて言った。
「悪いわね、じゃあね」
「もうすぐですね」
「ええ、帰って来るわ」
その彼がだと、私はマスターに言った。
「このお店にね」
「そうですね、さて二年でどうなったのか」
「楽しみね」
こう話してそしてだった、私は今は飲まないで待った。すると。
その右の席に来た、私はまずはそちらを見ないで声だけで言った。
「お帰りなさい」
「うん、帰ってきたよ」
彼の方も私を振り向いていないことがわかる、まずは声だけの挨拶からはじめた。
それからだ、お互いにだった。
顔を少しだけ向けて見合う、その顔はというと。
「二年経ったけれどね」
「変わってないわね」
「髪の毛もこの通りね」
「ええ、私もよ」
お互いに全く変わっていなかった、顔だけでなく髪の毛もスタイルも。
それでだ、お互いに話すのだった。
「外見は変わってないけれど」
「中身はどうかしら」
「今からそれを確かめたいね」
「そうよね」
「ではですね」
二人で話す、そうして。
私はマティーニ、彼はカシスオレンジを頼んだ。マスターもすぐに作ってくれて出してくれた。その二年ぶりのカクテルは。
それを飲むとだ、その味は。
「二年前よりもね」
「そうだよな」
二人で話す、その味は。
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