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王道を走れば:幻想にて
第三章、その4の1:策謀の実行
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まった。全身茶褐色のローブで覆った怪しい大男であり、その者は懐から角砂糖のような白い塊を取り出した。

「お嬢さん。こいつで一服どうだい?」
「悪いけど、頭すっ飛ばす砂糖よりも普通の甘いお菓子の方が好きなんですよ、あたしは。・・・何時の間に商人になってんだか。似合いませんねぇ、御主人」
「ふん・・・」

 麻薬であるマウンテンシュガーをぽいっと捨てながら男はフードを取る。垂れ目と垂れ眉が似合う、ユミルであった。

「パウリナよ。あの司祭服、やっぱり加減を間違えてていたぞ。胴回りが窮屈で仕方なかった」
「あーりま。どうもすいやせん、御主人。山吹色の人面像で許してね」
「悪趣味な贈り物だ。趣味に合わん。出来ればそうだな・・・浪漫をそそる様なものが欲しいぞ。古代の宝石とか、一国を滅ぼした儀仗とか」
「そんな王道チックな代物を教会が持ってるわけないでしょう。あるとするなら、持つと体力が増えたり、人格を変えたりする指輪とか、履くと無性にジャガイモを尻で潰したくなる軍靴とか」
「・・・そういうのは教会ではなく、魔道学院が持ってる代物だろう。禍々しすぎる」

 まともな人間ならば想像にもつかぬ程の混沌とした異物が脳裏に過ぎった。過去の記憶をどうにも思い出してしまったユミルは頭を振り、懐から銀の鍵を出してパウリナに渡す。

「ほら。遺物や古物が保管されている倉庫の鍵だ。教会の裏側にある。戸口は二箇所あって、お目当ての物は二階部分に安置されているぞ」
「有難う御座います、御主人。では、ちょっくら仕事に行ってきますね。御土産のピッカピカの宝飾品を、興奮したまま待っていて下さいね!」
「ああ、期待している」

 ユミルの応援をはにかみで応えつつ、パウリナは颯爽と路地裏へと駆け出していった。割れた石畳を踏みしめ、道に転がるゴミを飛び越える。路地中の暗い世界を、パウリナは不敵な明るみを帯びた表情で走っていく。
 この地域の地理ならば既に把握済みである。駆け足は迷わずに、順風のような軽快さを伴って教会の裏手に建立する、木造二階建ての大きな建物へと辿り着いた。赤百合の旗が門前にはためき、其処が教会の所有物件だという事が分かる。
 パウリナは別の建物の影から様子を窺った。建物全体が木柵のような壁に囲まれている。そして正面には大き目の戸口があり、そして建物の横に階段が備えられ其処から二階部分の戸口へと繋がっているようだ。例の如く、警備の者が正面に立っている。
 ならばやる事は一つだ。

「さってとぉ・・・登るかね」

 パウリナは足音を立てぬ用心さでそっと木壁に近付く。警備の者が気付く様子はない。パウリナは壁に身を寄せると、警備の者が気を逸らした一瞬を突いて壁を両脚で飛び越え、その勢いで壁を垂直にとんとんと蹴り登り、あっさりと階段の手摺に
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