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王道を走れば:幻想にて
第三章、その4の1:策謀の実行
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覚に集中する。枢機卿の声のボリュームや、音の反響がし易い教会内の構造も手伝ってか、厚木の黒門を伝って厳かな声が聞こえて来た。

『主神の御言葉は偉大にして神聖のものにしてこれを侵す事能わず。季節に、年に、月に、遍く主神の御言葉は地を照らす光となりて諸人の命となす。然りて信仰せよ。汝らの信仰と祈りを捧げ主神を崇め奉るべし。主神の御意思は生命の理であり天地の動静であり、これを以って天地開闢となすものなり。反駁する事能わず、されば汝の魂は拭う事能わぬ穢れを纏いてその命は異物と化すものなり。人非ざる者に魂は宿らず、よって我等はこれを浄化せしめるべく信仰を捧げるべし』

 慧卓はぎょっとした面持ちを浮かべて黒門を見詰めた。凡そ崇め奉る主神に向かって言う言葉ではなく、信徒に更なる信仰を強制する言葉であったからだ。

「・・・やばい事唱えてるな、本当に」
「は?」
「なんでもないよ。・・・祭り、愉しそうだな」
「そうですね。矢張りなんといっても国王陛下が先導切って開催に乗り出したのが大きいでしょう。財貨の使い道が一挙に増えて、皆が皆浮かれ騒いでおります。これを機に王都がより活性化すればよいのですが」
「ま、それは皆のやる気次第だね」

 なんとなしに見詰める街の活気に見惚れつつ、慧卓は再び込み上げて来た欠伸を舌根辺りで食い止める。もうすぐ昼時である。昼食は何を食べようかなと悩み始めた頃に、酒乱を慰めに行って来た憲兵達が戻ってきた。その手に大きな鶏肉の串焼きを幾本も携えて。

「戻りました。これお土産です」
「おおっ、串焼きありがとー!あ、俺それが良いな!」
「5モルガンです」
「・・・お金取るの?」
「5モルガンです」

 納得のいかぬ表情で慧卓は懐の皮袋から銀貨一枚を取り出して、串焼き二本と引き換えに手渡した。ばっくりと頬張った鶏肉は焼き加減が丁度良く、タレの辛味と肉の旨味が混ざり合った、正月の屋台の味を髣髴とさせる味であった。詰まり美味である。
 小さく笑みを浮かべる彼の傍ら、ミルカもまた頬をハムスターのように膨らませて鶏肉を咀嚼していた。彼らの目前に広がる祭事は一つの頂点を迎えていた。昼食時の慌しさである。  
 そんな光景を時同じくして見詰めていた者が居る。その者は教会から数軒離れた家屋、その庇の下に設けられた酒類の屋台にて、丁度麦酒を一杯飲み干したようであった。

「おうおう、祭りは盛況してますなぁ」

 自慢の銀髪をひらりと喜びに躍らせる女性パウリナは、その大胆な格好を外套で隠しつつ、を通りを埋める群集と遠くの教会一度に見渡していた。懐にはスリで稼いだ路銀が入っている。邸宅で盗みを働くよりも懐からさっと金品を盗る方が得意なのも、彼女の取り柄であった。 
 何気となく道端に佇んでいると、目の前に商人風の男が止
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