第三章、その4の1:策謀の実行
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れぞれに特有の性質や使用方法がある。種類だけを述べるのであれば魔法は数えられるだけで五つに分別できる。破壊魔法、回復魔法、意識魔法、補助魔法、召還魔法。そしてこれらを理性の下に制御して使役する事を魔道と定義したのが、我等王国高等魔術学院である』」
表題に『初めての魔法、その心得』と書かれた厚いブックカバーの本である。勉励の甲斐あってか、今では初歩的な学術書まで読めるようになっている。実際、彼が机に向かってする事はそれ以外に何も無い状態だったので、侍女や友人を見掛けては勉学をする事と相成っていたのだ。
ペラペラと適当にページを送り、目当ての項を探り当てた。
「『・・・破壊魔法の使用において最も気に留めておくべき事とは、目標物との間に遮蔽物が無い事である。火球を放った場合に目標との間に遮蔽物、例えば柱等が存在すれば、火球が遮蔽物に遮られ目標に到達する事無く無碍な効果を発揮するだろう。仮に柱が近ければ、詠唱者自身を傷つけかねない。故に破壊魔法を扱う際には必ずーーー』・・・ちょ、ページ切れてるじゃん。なんでだろうね?」
「程度の低い人間に読まれたくないんでしょう」
「ふん。何時か魔法を使えるようになって無理矢理にでも読んでやる」
「本はそれを期待して無いでしょうけど」
ふぅと溜息を一つ吐いて慧卓は本を閉じ、ミルカに返した。休憩時の暇潰しにと持ち込んでくれた本であるが、流石に読み疲れたのが本音であった。教会の庇の下、ただ直立不動の態勢を保つのはいたく辛い職務といえよう。こうも何も起きぬとなれば。警備任務を担当するミルカの他同僚も二人居るが、彼らもまた退屈そうである。
欠伸をかみ殺すように口をへの字にした後、慧卓は涙を浮かべた顔で言う。
「にしても暇だな。警備任務ってさ、欠伸をかみ殺す以外に何かやる事無いのか?」
「仕事舐めているんですか?唯でさえ嫌われ者である教会の儀式ですよ?邪魔したい輩なんて幾らでも居ますって」
「ああいう連中とか?」
慧卓が指差す方向には、屋台に凭れかかる様にして蛮声を放つ二人の男の姿があった。どちらも赤ら顔でどんぐり鼻をしており、手に持った酒瓶を当てもなく振り翳しては下ろしていた。
「昼間っから酒乱の態を晒す度胸があるなんて・・・大した奴らだ」
「・・・憲兵。あいつらをどっかに追いやって下さい。邪魔です」
『はっ!』
「相手は唯の酒好きのおっさんだぞ?」
「煩くされたら適いません。今頃教会の中じゃ、厳粛に儀式の言葉が述べられている最中ですよ」
暇を持て余した憲兵二人が酒乱達の相手へと向かうのを尻目に、ミルカは後ろの重厚な扉に向かった親指をくいくいと向けた。
慧卓は興味の鎌首を持ち上げて、その扉にそっと耳を当てた。抗議の口を開けかけたミルカを静かにさせ、慧卓は神経を聴
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