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王道を走れば:幻想にて
第三章、その4の1:策謀の実行
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馬もすぐに散らして秩序を回復して!!急いで!!」
『はっっ!!』

 慧卓の凛然とした命に憲兵達は敬礼を返し、野次馬が集り始める現場へと足を向かわせた。

「ミルカ、悪いが現場で指揮を頼む!騎士の命令なら周りの奴は楯突かないし、信頼もしてくれる!」
「分かりました!教会の警護は任せましたよっ!!・・・もしこの状況を作るのが狙いだとしたら、隙を突くなら今しかありませんからね!」

 言葉を掛けて、ミルカは急ぎ足で向かう。騎士の鎧に相通じる颯爽とした背中である。
 残された慧卓はミルカが去り際に残した言葉を気にかけていた。
 
(・・・隙を突く、か)

 教会の黒い扉に背を凭れさせながら慧卓は道端の塵に視点を置いて考え込む。仮にミツカの言った事が本当の事だとしよう。即ち騒ぎを起こして周辺区域を巡回する憲兵達や警備兵の注意を惹くのが目的。となればその隙に何かをやったり、或いは何処かに行こうととするのが自然だ。教会は無い、自分が見張っている。宝物を収めた倉庫の方も、何があっても警備兵は離れたりしない。では一体何処か。
 ふと、目端に何か黒い影が走るのが見えた。急いで目を遣るが、其処には群集でごった返した通りと屋台、そして聖鐘へと続く階段の入り戸しか存在しない。

(今何か通ったような・・・)

 疑念に頭を振って再び視線を戻そうとした時、「ばたんっ」と扉が閉まる音が響いた。慌てて目を遣る。その音は聖鐘へと続く入り戸の方から響いたのだ。
 急ぎ足で慧卓が近寄り、慧卓は戸の中へを身を進ませる。陰気な雰囲気を醸す螺旋階段の奥へ意識を遣った時、痛烈な殴打の音と悲鳴が聞こえて来た。

『・・・っっ、ぁぁっ!!』
「!!やっぱり誰か居るな!!」

 慧卓は急いで階段を登り始める。上階の方でも駆け足気味の音が聞こえて来た。矢張り何者かが侵入したようだ。
 悲鳴の発生源へと近付くと、其処には一人の警備兵が、階段の壁に凭れる様に倒れていた。顎から口端にかけて紫に腫れ上がっており、唇が血で滲んでいる。

「おい、確りしろ!!誰にやられた!!」
「わ、若い男だっ・・・っぐ、魔道杖を持っていた!」
「ちっ!魔法の対処なんてわからねぇよっ!!兎に角俺はあいつを止めに行くから、貴方は出来るだけ早く下に降りて援軍を要請してくれ!!」
「分かったっ・・・杖さえ奪えば後は物理でなんとか出来るぞっ!」
「ありがとう!」

 慧卓は声を掛けて階段を再び登り始めた。何処までも続くような高々とした階段が今は恨めしい。最初は疾駆していた足も段々と重たくなり、胸も荒げて弾んでくる。

「よ、よりによってぇっ!ぜぇ・・・なんでっ、聖鐘なんだっ、よぉっ!!!」

 壁に手を置きながら、慧卓はどんどんと階段を登る。まだ見ぬ侵入者に恨みを募らせて
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