陸_アイドルはつらいよ
一話
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「それで、了承したんですか?」
番組の打ち合わせを終えた鬼灯が戻ってくるなり、ミヤコは先程までの事の顛末を話した。
鬼灯は、この世界に君臨する王のように足と腕を組み、そばには金棒を携えてパイプ椅子に座って彼女の話を聞いていた。『全く勝手なことしやがって』と、言われなくても表情でわかる。
ダースベイダーのテーマ曲が、勝手に脳内再生された。
「い、いえ。でもおもしろそうですね、とは言いました。マキちゃんも推してくるし・・・・・・」
「わたしが何より驚いているのは、あなたがスカウトされたことです!まあ確かに、最近は一癖あるアイドルじゃないと生き残れない傾向にはありますが、それにしても大きな賭けだ」
「じわじわ刺さります、そのお言葉」
「ギャグ系アイドルとでも名乗ればいい」
「投げやりですよ、鬼灯さん」
「まずいろいろと無茶でしょう。臨死体験中にあの世でアイドル活動なんて、型破りにも程があります」
鬼灯はやれやれと頭を抱えて言った。
ごもっともな話である。無事に生き返った時に、心配してくれた家族や友達に何と言えばいいのか。
『かくかくしかじかで、地獄でアイドルしてました』なんて言ったら、次は精神病院で入院することになるかも知れない。
「でもその・・・・・・とりあえずCMに出るだけって言われました」
「CM?」
「新発売のコスメらしいです。リリスとか何とか」
「リリス・・・・・・それってマキさんが出演していたCMでは」
「今回は二人欲しいんだそうです」
「なるほど」
鬼灯はようやく腕組みを解いた。
「まあ、ミヤコさんがやりたいならやればいいですし、断りたいなら断ればいいと思いますよ。わたしもこの局のスタッフさんにはお世話になっていますし、特に反対する理由はありません」
「ほんまですか、じゃあやる!」
「子供か」
「ちょっとは憧れてたりもするんですよね、CM出演とか」
ミヤコはウキウキした気持ちで、自分CM撮影に参加している様子を想像した。
メイクも髪型もいつもの何倍も綺麗にされて、かわいい衣装、自分を追うカメラ!
柄にもなく乙女な自分に違和感がなかったわけではないが、彼女は楽しみだった。
そんなミヤコを見て、鬼灯は少し呆れたようにため息をついた。
「でもあれですね」
「はい?」
「テレビに映るくらいなんだから、もう少しこう、華奢でないと」
「・・・・・・えっ?」
「マキさんと並んだ時に、浮きたくないでしょう!」
鬼灯は立ち上がり、金棒を持つ。仁王立ちだ。
「言い返せないのが辛いわ、ほんま。要は痩せろってことですよね」
「今の標準体型から少し絞って、美容体系にまで持っていく」
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